(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸アパートで賃借人の同居人(妻)が自殺……賃貸人は、事故物件となった部屋の賃料を減額せざるを得なくなりました。この損害について、賃借人、保証会社はそれぞれ損害賠償責任を負うのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際にあった裁判例をもとに解説します。※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

損害賠償について、保証会社は責任を負うか

3点目として、このような事件の損害賠償について、保証人(保証会社)も責任を負うかという点について、裁判所は、以下のように保証契約の内容を踏まえて保証会社の責任は否定しています。

 

「本件保証契約について、保証期間を本件賃貸借契約の期間と同一のものとし、保証金額を本件賃貸借契約の期間内に被告Y1(注:賃借人)が原告に対して支払うべき賃料等の総額を上限とすること、被告Y1が本件賃貸借契約に基づき負担する債務のうち賃料等の未払金の支払を保証の対象とすること、賃借人である被告Y1の責めに帰すべき事由により生じた本件居室の滅失又は毀損に係る損害賠償金は補償の対象外とすることが認められる。」

「本件事故によって原告に生じた損害は、本件賃貸借契約に基づく被告Y1の賃料等債務とは異なり、同被告の責めに帰すべき事由によって生じた本件居室の心理的な毀損に係るものというべきであるから、被告保証会社が保証すべき本件保証契約の対象ではない。

 

このように本事例では保証会社の責任は否定されましたが、この点は、保証契約の内容・定め方によっては、保証会社が賠償責任まで負担する余地もあると考えられます。

 

なお、賃貸人は、その他、慰謝料や弁護士費用も請求しましたが、これは裁判所に否定されています。

 

本事例は、賃貸物件で自殺等の事故が生じてしまった場合に生じる損害賠償の問題とこれにまつわる争点について網羅的に判断しており、実務的に参考になります。

 

なお、本件のような賃貸物件における死亡等の事故については、国土交通省より令和3年10月8日に公表された「宅地建物取引業法による人の死の告知に関するガイドライン」において、死亡等事故が発生した後3年間は、原則として新たな借主に告知すべき、と策定されています。

 

このガイドラインの内容が、今後の同種事案における損害賠償金の算定にあたり一つの基準になると考えられます。

 

 

北村 亮典

弁護士

こすぎ法律事務所

 

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