「親子間売買」を金融機関が嫌うワケ
住宅ローンが通らなければ、親の住宅ローンを完済させることはできませんので、親から子が自宅を買い取ることができません。
親の住宅ローンを完済せずに親から子へ自宅の所有者を変更すると、親が借りている住宅ローンの契約違反となり、住宅ローンの残金を一括で請求され、支払えなければ競売にかけられ、家を失うという最悪の結末を迎えかねません。
読者の方のなかには、「親子間売買は難しい」という話を聞かれた方もいるかと思いますが、実際に親子間売買は任意売却のなかで最も難易度が高く、成功率が低いとされている方法です。そして、親子間売買の成功率を下げる最大の要因が「住宅ローンが通らない」「住宅ローンが極めて通りにくい」ということにあるのです。
では、なぜ親子間売買では住宅ローンは通らないのでしょうか。
金融機関は親子間売買を原則「贈与」だと思うから、というのが大きな理由です。
親子間で自宅を売買しなくても、親が亡くなれば、いずれ子が自宅を相続することになります。つまり、親から子が自宅を取得するには「相続」や「贈与」といった方法が採られるのが一般的なのに、あえて「売買」という形をとることに何か別の目的があるのではないかと金融機関は懐疑的になってしまうのです。
それというのも、住宅ローンは事業ローンやカードローン等に比べて、融資額が大きく、非常に安い金利が設定されている金融商品なので、親子間売買を偽装して、住宅購入目的で融資された住宅ローンを、事業資金など別の用途に使用するなど低金利の資金調達手段として悪用されることを危惧しているのです。
また、親子間売買が資金隠しの手段として用いられることも少なくはありません。
例えば自宅の所有者である親に、住宅ローン以外の借金があった場合、お金を貸している人(債権者)は貸したお金を返してもらえないときは最終的には財産を差し押さえ、その財産を売却してお金を回収します。
このとき、あらかじめ自宅を子どもに売却しておけば親の財産ではなくなるので自宅の差押えを回避できると考えるわけです。