(※写真はイメージです/PIXTA)

住宅金融支援機構が公表しているデータによると、現在、25人に1人が住宅ローンの返済に問題を抱えています。住宅ローン支払いの目途が立たないときの解決法の1つに、自宅を売却し、その金額でローンの残金を返済する「任意売却」が挙げられます。ここでは、クラッチ不動産株式会社代表取締役・井上悠一氏が任意売却についての質問に答えていきます。

 

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税金を滞納…禁止されている「無益な差押え」が横行

Q.税金を滞納してしまい、自宅が差し押さえられています。こんな場合でも任意売却はできますか?

 

A.市区町村が差押えの解除に応じてくれるなら、任意売却は可能ですが、差押えの解除に応じない強硬な市区町村もありますので、この場合は、任意売却をすることは難しくなります。

 

ただ、住宅ローンを担保するために抵当権が設定されている自宅を差し押さえる行為は「無益な差押え」に該当する可能性が高いです。無益な差押えとは、滞納している税金を回収する見込みがない財産を差し押さえることで、国税徴収法48条で禁止されています。

 

このような財産を差押え・換価しても、滞納税の回収にはなんの役にも立ちませんから、無益な差押えと呼ばれているのです。

 

例えば、住宅ローン債権者のために1番抵当権が設定されている場合、自宅の売却代金は1番抵当権者である住宅ローン債権者に優先的に返済されるので、市区町村が差押えを行っても、滞納税を回収することはできません。そのため、役所が差押えを行っても、「無益な差押え」になるので解除を要求できるのです。

 

ただし、頑なに解除に応じない市区町村も存在します。

 

この場合、取消しを求めて不服申立てを行ったり、取消訴訟を提起したりすることもできますが、不服申立ては差押えを知った日の翌日から60日以内に行わなければならなかったり、また取消訴訟についても原則として不服申立てを先に行うことが要件とされているため、競売が差し迫った状況下でこのような手続きを行うことは時間的に無理があります。

 

そのため、差押えの解除を求めて粘り強く交渉をしていくことになりますが、役所が硬直的な態度を取り続けているとタイムオーバーとなって競売にかけられるケースも少なくありません。税金を滞納している場合は、そのまま放置せず、差し押さえられる前に、役所に分納を認めてもらえるよう相談するのが得策です。

 

無益な差押えをし続ける市区町村は「競売では思いがけない高値がつくかもしれない」「税金は免責されないし、自己破産しても支払い続けるものだから優先されるべきだ」などと主張することが多いです。

 

しかし、その結果、競売になってしまい低額で落札されても、市区町村は責任を取ることはありません。また、自己破産をしても免責されないことは確かですが、任意売却でハンコ代として30万円でも回収できれば、全額でなくとも市区町村として税の回収ができています。

 

免責されないといっても、ない袖は振れない状況で払えというのは無理な取り立てをしているだけで、市民全体の利益を見て行動していない公務員の行動といわざるを得ません。このような柔軟性のない市区町村により任意売却ができなかった方は大勢いらっしゃいます。

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※本連載は、井上悠一氏の著書『あなたを住宅ローン危機から救う方法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

あなたを住宅ローン危機から救う方法

あなたを住宅ローン危機から救う方法

井上 悠一

幻冬舎メディアコンサルティング

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