自身の預貯金も、兄の口座に移し替えていた母親
兄の相続人は母親ですが、高齢の母親が相続手続きを行うのは大変なので、小林さんが代行を引き受けることにしました。
そこで、ごく最近相続を経験した知り合いにあれこれ相談したところ、気がかりな指摘を受けました。「亡くなった日現在の預金が兄の名義なら、たとえ母親が兄名義で預け替えしたとしても、兄の財産として申告しなければならないのでは?」というのです。そのため、慌てて相談先を探したとのことでした。
●今回の「母親から振り替えた預金」は申告しなくてOKだと判断
筆者は詳しく話を聞き、もともとは母親の預金であり、会社員の兄が2000万円以上の預金をしていた事実がないことがはっきりしているのであれば、母親の預金として除外し、今回の兄の相続財産からははずすことができると判断しました。
要は、今回の相続では申告をしないが、先に起こる母親の相続時に財産として申告をするわけで、相続税を先送りするという考えです。 そのことを伝えると、小林さんは安心した表情を見せました。
●母親の相続を見据え、不動産の登記はそのままに
自宅の土地建物の登記は、相続人に変更するのが一般的ですが、いま母親に変えてしまうと、また次の相続で変更が必要になります。それであれば、とりあえずは亡くなった兄の名義のままとして、費用をかけないことを提案しました。
人生は想定外に展開することもある
子どものためを思って預金していた母親の心情はよく理解できます。また、親心からの行為が相続税の対象とされることに理不尽を感じるのもよくわかります。
普通、相続は年齢の順番でなされていくものであり、大切な子どもが親より先に亡くなってしまうのは、親にとってどれほどつらいことか、察するに余りあります。筆者は、せめて無理のない範囲で節税し、小林さん親子に安心していただければと考えました。今回はこちらの提案によって預金の分の相続税が節税できたことで、小林さんにも満足していただくことができました。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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