急ぎ探した介護施設へ入所後、2ヵ月で母も帰らぬ人に
本格的な手続きの段になって、自宅への帰り道もおぼつかない母親をひとりにはできず、小池さんのきょうだいは手分けして介護施設を探し、大急ぎで母親の入所を決めました。
同じ敷地で暮らしているとはいえ、兄とその妻は引き継いだ仕事が多忙を極め、遠くに嫁いだ姉は舅姑の介護を引き受けており、母親の面倒を見るのは困難です。そのため、比較的近くに住む小池さんが実家に通い、母親の身の回りの世話をしてきました。介護施設の入所時も小池さんが中心となり、あちこちへ動き回りました。
母親を入所させ、やれやれと思った2ヵ月後、母親は入所先の施設で肺炎を発症し、あっという間に亡くなってしまったのです。父親が亡くなってから8ヵ月で、遺産分割協議にも未着手の状態でした。
「両親が相次いで亡くなるような状況は想像していませんでした。いろいろ調べてはみたのですが、どんな手続きをとるべきか、さっぱりわからなくて…」
筆者の事務所のソファに腰掛けた小池さんは、不安そうに視線を落としていました。
相続の仕方によって、二次相続の税額が異なってくる
父親の相続では、本来は母親の権利である配偶者の特例を適用し、財産の半分、あるいは1億6000万円まで相続税の納税は不要とする予定でした。
ところが、遺産分割協議をする前に母親が亡くなってしまったため、すぐに二次相続の申告も必要になります。遺産分割協議にて母親が財産を半分相続するという相続の仕方も選択できますが、二次相続での相続税を考慮すると、母親を飛ばして子どもだけで相続したほうが、相続税の負担が少ないこともあります。
父親の時の相続税と母親の時の相続税の両方を考慮したのち、小池さん・兄・姉の3人で相続の仕方を選択することになりました。
母親には預金のほか、父親と共有名義の不動産等の財産がありました。シミュレーションした結果、小池さんきょうだいの場合は、母親に父親の相続分を渡すことなく、3人で相続したほうが負担は少ないことがわかりました。
ご両親か相次いで亡くなるというつらい状況に、小池さんきょうだいはひどく動揺し、悲しんだということです。とはいえ、きょうだい仲は円満でしたので、筆者からは、3人でよく話し合い、相続税や登録免許税などの負担が少ないほうを選択して手続きを進めるようアドバイスをしました。
その後しばらくして小池さんから、兄が会社や不動産を継ぎ、小池さんと姉は現金を相続するかたちで、問題なく相続手続きが終了したとの報告をもらいました。
「高齢の両親が相次いで亡くなってしまった」というケースは意外とあるものです。その場合、相続の仕方によって二次相続の相続税額が変わってしまうため、十分にシミュレーションを行い、比較検討することが大切です。二次相続の負担を減らすため、今回のケースのように母親に財産を寄せない選択肢もあります。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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