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世界中のゴルフファンを熱狂させたプレースタイル
■ゴルフに革命を起こしたタイガー・ウッズ
海外の一流プレーヤーは日々技術向上に力を注いでいます。日本でも馴染みのあるタイガー・ウッズのプロフェッショナルとしての姿勢や取り組みについて、私が実際に取材をしたり、親交のあるクリス・コモ(「週刊ゴルフダイジェスト」で著者とコモによる「クリス・コモのバイオメカ研究所へようこそ」連載中)をはじめとした歴代のコーチに話を聞いた内容をもとにお伝えしようと思います。
タイガーは、アマチュアからプロ転向翌年の1997年4月に、いきなりマスターズ・トーナメントで優勝し、世界を驚かせました。
マスターズ初日前半こそ、初出場のプレッシャーからか4オーバー40でしたが、後半で6アンダーを記録すると、2日以降もスコアを伸ばし続け、完全な独走状態となりました。そして、最終的には2位に12打差の通算18アンダーという圧倒的なスコアで優勝を飾ります。
このときタイガーがゴルフ界に与えた衝撃は計り知れないものでした。それはプロ入りから1年足らずの青年が圧勝したからではありません。300ヤードを超えるドライバーショットを放ち、ピンをデッドに狙う攻撃的なプレースタイルで世界中のゴルフファンを熱狂させたからです。
それまで、ゴルフはパワーよりも技術や経験が生きるスポーツだと言われ、選手たちは真っすぐ飛ばすためのスイング技術を磨き、小技の精度を高めることに取り組んできました。
ところが、タイガーは300ヤードを超えるドライバーショットを武器に、そうしたゴルフ界の常識を破壊し、パワーゲームの扉を開いたのです。タイガーの出現によって、ゴルフはそれまでとは全く違うスポーツになったといっても過言ではありません。
当時21歳3カ月の最年少優勝記録は2021年現在も破られていません。この年は出場するトーナメントを総なめにするほどの破竹の勢いで勝ち星を積み重ね、世界ランキング1位、PGAツアーの最年少賞金王にも輝きました。スーパースター街道の始まりでした。
華々しい活躍はその後勢いを増し、32歳になった2008年にトリプル・グランドスラム(4大メジャーをそれぞれ3回制覇すること)を達成し、彼のゴルフ人生は頂点を極めました。