(※画像はイメージです/PIXTA)

指導者の役割は、指導を受ける側に自分の取り組みが「適切でない」と気づかせることです。反対に、恐怖で相手を指導するような指導は絶対にNG。本稿では、「名指導者」として名をはせたジェフ・ヴァン・ガンディやジネディーヌ・ジダン、小出義男のコーチングから、優れた指導者の条件について考えます。※本連載は吉田洋一郎氏の著書『PGA 超一流たちのティーチング革命』(実務教育出版)から一部を抜粋し、再編集したものです。

勝利をもたらす指導者の条件

ゴルフに限らず、アメリカのプロスポーツは完全な分業制になっています。しかも、それぞれの役割をプロフェッショナルが担います。何でも屋では太刀打ちできない、本物のプロ集団。これがアメリカのプロスポーツです。

 

私はプロバスケットのNBAを観るのが好きなのですが、ニューヨーク・ニックスやヒューストン・ロケッツのヘッドコーチを務めたジェフ・ヴァン・ガンディがとても強く印象に残っています。

 

彼は2007年以降現場から離れ、テレビ解説者などを務めていますが、選手経験がなく、NBAのプロチームを指導した人でした。お父さんが大学のコーチを務めていたことも影響したのでしょう。彼も選手ではなくコーチの道を歩みました。

 

高校、大学のチームを経て、NBAのアシスタントコーチからヘッドコーチへとステージを上げていき、1999年にニューヨーク・ニックスのヘッドコーチとしてNBAファイナルを経験します。残念ながら優勝は果たせなかったのですが、選手未経験の人物が世界最高峰の舞台のヘッドコーチだったわけです。小柄で、見るからにひ弱そうなバン・ガンディーが2メートル以上の大男たちに囲まれている姿がいまも鮮明に思い出されます。

 

NBAでは体格やカリスマ性が重要なのではなく、チームを勝たせることができる戦略性とチーム戦術の方法論を持っていることが指導者の評価軸ということなのです。更に、シュート、ディフェンスなどのアシスタントコーチが4〜5名、トレーナーが1〜2名、分業制で自分の持ち場の責任を負い、相互がリスペクトし合うことでチームが機能します。完全分業制ですが、優勝という目的のもとにチームがまとまります。

 

逆に、選手としての実績を持つ人が自己流で指導するということは現代ではもう通用しません。自分ができたことを教えても、それが相手に合うかどうかわからないからです。

 

選手としての経験がどれほどあっても、理論を学んでいないと指導者は務まりません。理論があるから、戦略や戦術をつくることができるのです。

 

もちろん、名選手で名監督と言われる人もいます。現在レアル・マドリードの指揮を執る、元フランス代表ジネディーヌ・ジダンです。普段は寡黙なのに、試合となると熱情的になる。しかし、好戦的でなく紳士。選手時代に戦術を体得したうえに、現役引退後は名将に付いてさらに戦術論に磨きをかけ、いまや選手時代と同等の高い評価を受けています。

 

彼にしても、監督としての頭脳に徹し、決して自分の思うように選手を操作しようとしません。選手の個性を見極め、チームとして機能するように巧みな采配を振るうので、選手だけでなくフロントからも信頼が厚いのです。人望による人心掌握ということです。

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PGA 超一流たちのティーチング革命

PGA 超一流たちのティーチング革命

吉田 洋一郎

実務教育出版

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