
練習熱心なアマチュアゴルファーほどゴルフ雑誌やユーチューブなどの動画で紹介されているようなテクニックを取り入れることがあります。しかし、それはそれはただの「情報」であって、上達してくれる「知恵」でもありません。※本連載は吉田洋一郎氏の著書『PGA 超一流たちのティーチング革命』(実務教育出版)から一部を抜粋し、再編集したものです。
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「エベレストを目指しているのに軽装だった」
■勝つために必要なこと
石川遼選手が米国ツアーに挑戦していた頃、面白いことを語っていました。
「みんなでエベレストの頂上を目指しているのに自分は軽装で行ってしまったので、結局、怪我をして帰ってきた。このとき、頂上はとても遠いと思ったし、そこはトッププロの大行列だった」
PGAツアーでは、多くの選手が行列をなしながら虎視眈々と頂上に立つことを狙っているわけです。そこに軽装でいくのは間違いで、きちんと準備しないとベースキャンプもつくれないという主旨です。富士山なら軽装とは言わずとも、山登りのトレーニングをしなくても登れます。その程度の準備ではエベレストだったら100%無理ということです。
男子選手がメジャーで勝つには、経験値も技術力も高みに立っていなければなりません。
ジャック・ニクラウスやタイガー・ウッズのように、20年以上にわたりメジャーで勝ち続けたのは、限られた偉大な選手だけです。若いときに急成長して勢いで勝ったものの、その後はメジャー優勝から遠ざかるという例はたくさんあります。
一時の輝きだけで終わる選手は怪我が原因の場合もありますが、更に上を目指してスイングや体を変えて低迷するケースもあります。
マルティン・カイマーというドイツの選手は、20代半ばで全米プロと全米オープンの2大会を制しましたが、より完璧を求めてスイングを変えた結果、調子を崩して2014年の全米オープン以来、メジャーでの優勝から遠去かっています。
29歳のときに全英オープンの優勝経験があるデビッド・デュバルも、かつてはタイガーと優勝争いを演じ、1999年にはタイガーを抑えて賞金王にもなりました。それがスランプに陥り、2009年の全米オープンで惜しくも2位タイとなったのを最後に表舞台からは消えました。
彼は30代のこれからというときに、より良くしようとスイングを変えたり、太り気味の体を絞るなど、上を目指して試みた改造が裏目に出てしまいました。メジャーで優勝したことで、さらなる高みを求めて改造を施したことで狂ってしまうパターンの典型例です。
PGAツアーを戦い抜くためには、選手自身のプレースタイルにあったコーチを厳選し、勝つためのプロジェクトチームをつくることが前提条件ですが、迷路に入ってしまったのは彼らのチームづくりに問題があったからだと思います。これまでのスイングとはまったく異なるスイングモデルのコーチを選び、スイングを改造しようとしたことは大きな失敗でした。
彼らが考えなくてはならなかったのは、今までのスイングを進化させたり、さらに安定させることでした。適切な戦略を持たず、良さそうなものに手を出したことで大きなものを失いました。
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