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メジャーで勝つために何が必要か?
■「チーム・ケプカ」の戦略的勝利システム
PGAツアーは年々レベルが上がってきており、チームには高い専門性が求められています。このことをよく体現しているのが、ブルックス・ケプカというアメリカの選手です。
2020年に世界ランキング1位になったケプカはチームを完全にプロジェクトとして捉えています。4大メジャートーナメント(マスターズ、全米オープン、全英オープン、全米プロゴルフ選手権)の勝利に照準を合わせ、チームメンバーとともにベストな状態で試合に臨む準備をするのです。メジャートーナメント以外の試合には興味がないと公言しているほどです。
ある平場の試合に出場した際、彼は午前の9ホールをプロアマでラウンドし、軽い練習やランチを摂って昼過ぎには帰りました。ほかの選手は月曜日に現地に入り、火曜は練習をして水曜のプロアマに出場。そして木曜から日曜までの4日間、トーナメントに臨みます。
ケプカは水曜日に来て9ホールラウンドしただけなので、残りの半分のコースがわからないまま本戦を戦っていました。準備段階からほとんどやる気が見られず、成績も予選突破のギリギリラインです。
それがメジャー大会になると別人になります。前週から現地入りし、日曜日から練習場で打ち込み、練習ラウンドをみっちり回る熱の入れようです。
出場可能な試合に多く出場すれば、それだけ賞金を稼げる可能性があるため、多くの選手はここまであからさまに手を抜きません。しかしケプカは、メジャー以外の試合を練習ラウンドと割り切って調整を行います。
ケプカは計画性と戦略性を持って逆算の発想で4大大会に合わせてピークをつくるわけです。
メジャートーナメントで勝つために何が必要なのかを理解しているからこそ、オン・オフの調整がうまくできるのでしょう。ピークに合わせるための練習方法や調整方法が明確だから、シーズン中でも休暇を取ってリフレッシュすることが可能なのだと思います。
普通の選手なら、メジャー4つに絞って惨敗したら……と考えるでしょう。だからこそケプカのような大胆な発想や行動は異色なのです。
この勝利のシステムを支えているのが、チーム・ケプカです。心技体における各専門分野のプロの意見を集約して方針づくりをしています。
■クラブにこだわらないケプカの流儀
ツアープロはどこか職人気質な部分があるものですが、彼にはそれが感じられません。とても淡白であり、合理的という印象です。
一般的にプロゴルファーは、クラブを剣術の剣や料理の包丁のように、グラム単位の重さにまでこだわって選びます。元メジャーリーガーのイチローさんがバット選びにとてもこだわったことはよく知られています。職人技の広角打法はバットへのこだわりから到達した技法でもあったようです。
それがケプカの場合、クラブにはあまりこだわりを持たず、データ的に良かったから使うという主義です。
ケプカに「アイアンシャフトの硬さを教えてください」と質問したことがあります。その問いにケプカはこう答えました。
「よくわかりませんが、データ的によかったものをクラフトマン(注:プレーヤーに合わせて最適なクラブに調整する職種の人)に出してもらって使っているだけです」