(※写真はイメージです/PIXTA)

内閣府『令和7年版 高齢社会白書』によれば、65歳以上の人がいる世帯のうち20.2%は「親と未婚の子のみの世帯」です。こうした成人した子と親との同居は必ずしも問題ではありませんが、生活費負担や自立の遅れが重なると、親の老後設計に影響を及ぼすことがあります。実家同居によって子の貯蓄が増えやすい一方、独立の動機が弱まる構造も指摘されています。

「家にいたほうが貯まるから」実家で暮らす36歳の息子

神奈川県内で暮らす博さん(仮名・63歳)は、定年後も再雇用で働いています。年収は約410万円。妻と二人暮らしのはずでしたが、長男の亮太さん(仮名・36歳)が同居を続けています。

 

亮太さんは正社員として働き、年収は約420万円。生活費は月2万円のみ家に入れています。

 

ある日、博さんが聞きました。

 

「いつまでいるつもりだ」

 

亮太さんは笑って答えます。

 

「いや、ここにいるのが一番貯まるからさ」

 

実際、亮太さんの貯蓄は約800万円に達していました。博さん夫婦の生活費は月約26万円。光熱費・食費・住宅維持費の多くは親側が負担しています。

 

「食費も電気代も3人分。でも本人は気にしていない」

 

亮太さんは浪費家ではありません。むしろ堅実で、貯蓄を重視しています。

 

「無駄な家賃払う意味ないでしょ」

 

その言葉に、博さんは反論できませんでした。住居費の負担がないだけで、年間で数十万円以上の貯蓄差が生じます。

 

「合理的な部分もあるんです。でも…」

 

博さんは言葉を止めます。

 

博さんの定年は2年後。年金見込み額は夫婦で月約19万円です。総務省『家計調査(2024年)』では、高齢夫婦無職世帯の平均支出は約25万円とされ、年金だけでは不足する構造が示されています。そこに同居子の生活費が残れば、家計負担は続きます。

 

「自分たちだけでも足りないのに」

 

妻は言います。

 

「一人暮らししたらお金減るでしょ。かわいそうじゃない」

 

亮太さんは家事も手伝い、親子関係は良好です。問題は関係ではなく、依存の構造でした。

 

ある夜、博さんは再び言いました。

 

「結婚とか考えないのか」

 

亮太さんは答えました。

 

「今のままで不満ないし」

 

その瞬間、博さんは理解したといいます。

 

「こいつは出る気がないんだ」

 

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