プラットフォーマーを使ってし市場に参入
(3)フリー(無料)顧客の中から有料顧客を炙り出す
Googleは、早い段階からこのフリーのビジネスモデルを展開してきました。Gmailはこのフリーのモデルの典型例です。
そして、メールが貯まってくると、過去メールの削除リスクが高いので、有料プランに移行となります。
フリーのビジネスモデルの基本は、多くのユーザーにはベーシックな機能を無料で提供し、その中からより便利な付加価値機能を有料で使ってもらう顧客を得ることです。
名刺管理サービスのSansan(サービス名称は8(エイト))は、スマホで名刺の写真を撮って、サーバーに送り、クラウド上で名刺管理を行ってくれますが、従来の名刺管理ソフトの問題点は、認識間違いが多く、使えなかった点でした。Sansanは、それを人間の目で確認、修正して使用に耐えるものにしました。
そして、一定以上の情報は有料版でないと使えないとしています。ビジネスで実際に使おうと思ったら、有料版に移行した方が便利なので、企業では、自社で名刺管理するよりもSansanのサービスを使った方が便利ということで有料契約をするところが出て来ています。
このフリーのビジネスモデルは、当初無料顧客に対して、コストを掛けてサービスを行わなければならないので、初期投資が必要となります。
多くの日本企業は、事業毎に収支管理を行うので、こうした初期投資が必要となるビジネスモデルが採用しにくい状況にあります。しかし、米国のベンチャーは、GoogleやAmazonのように当初の赤字を構わず初期投資し、他社が追い付けないほどの規模になってから有料化してごっそり稼ぐという方式を取ります。それだけベンチャーに出資するVC(ベンチャーキャピタル)の資本力と長期的視野が勝っているということでしょう。
(4)プラットフォーマーを活用して、参入する
Amazonや楽天、ヤフー等のビジネスモデルをプラットフォーマーといいます。そのサービスの上に様々な売り手と買い手を乗せ、駅のプラットフォームのような賑わいを見せているからです。
プラットフォーマーは、Amazonを見ても分かるように、当初書籍でビジネスを始めましたが、今やあらゆるものを扱うようになっています。もともと創業者のジェフ・ベゾスの考え方が、Everything Store (なんでも揃うお店)ということなので、その考えに則って、取扱商品・サービスを広げてきたと言えます。プラットフォーマーは、このように自社のプラットフォームの上で商品・サービスラインを次々と拡張していくことができます。
同じようなことができるといいのですが、一度こうしたプラットフォーマーが誕生してしまうと、後からの参入、競争は不利です。ですから、後から始めるのであれば、既存のプラットフォームを活用するか、違うタイプのプラットフォームを形成することを考えた方が賢明です。
例えば、既存のプラットフォームを活用するということでいうと、地方で人気の洋菓子店が、楽天にお店を出して、カテゴリーで一番を取り、それを宣伝文句にして拡販を行うことで、売上が数倍伸ばせられます。これを自社でサイトを開設して、地味にメルマガを出したり、わずかな広告費で広告を打っても、大きなヒットにはつながりません。それよりも既存のプラットフォーマーの集客力を使って、商品・サービスを売り込んだ方が、マーケティングコストはぐっと下げられます。
また、最近では、YouTubeのような動画プラットフォームもありますから、そうしたものを活用して、動画広告を打つことができます。人気ユーチューバーの人たちの中は、自分のチャンネルの視聴者数を増やして、そこに掲載される広告料で稼ぐ人たちもいます。ただ、Google等のサイト運営者の方針変更があると、その影響を直接受けて、ビジネスが成り立たなくなるようなケースもあるため、要注意です。プラットフォームに依存するとそういうリスクがあることも念頭に入れて利用した方がいいですね。
サブクス、フリー、プラットフォーム等最近流行りのビジネスモデルを自社に応用することを検討する
井口 嘉則
株式会社ユニバーサル・ワイ・ネット 代表取締役
オフィス井口 代表