ある日突然「透析治療」になりうる…慢性腎臓病の実態
誰でも急に気分が悪くなったり、お腹が痛くなったりしたら「ただごとではない」と思うでしょう。それが耐え難いほどだったら、すぐ病院へ行くのが普通の感覚です。
しかし、長期にわたって少しずつ症状が悪化していく慢性疾患の場合、体に相当な負担が掛かっていても見過ごしてしまいやすいのが問題です。
貧血を例にとっても、健常時で13g/dL程度ある血色素(Hb)値が急に6g/dLまで下がったとしたら、たいていは体調不良を訴えるものです。しかし、同じ変化幅でも数ヵ月単位でだんだん下がっていくと、同じ6g/dLになったとしても、さしたる自覚症状が出ないことは、CKD(慢性腎臓病)の患者さんにはよくあることです。
自覚症状をあてにしない――これは、CKDの患者に強く訴えたいことの1つです。たいした症状がないから、大丈夫だろうと思っていると、ある日突然「透析です」と告げられ、ショックを受けてしまうことになりかねません。
これは医療機関側にも問題があると思いますが、患者さん自身が自衛のために、つまりCKDに対して十分な手を打てないまま透析になってしまった、といった後悔をしないためのポイントは、「検査の数値や画像について、医師から十分な説明を受ける」ことです。それもただ、数値がいくつですよ、では見れば分かる話ですので、どの程度病気が進行しているのかが分かるように説明を受けることが大切です。
検査数値はたくさんあって、すべて聞くには限度がありますので、せめて「クレアチニン値」は確認してください。原疾患や全身状態にもよるものの、クレアチニン値が上昇しても1.5~3mg/dLくらいの段階であれば、食事療法にしっかり取り組めば透析時期を遅らせることは十分可能ですし、回避できる可能性があります。
なお、eGFRと蛋白尿、そして腎性貧血の場合は貧血の数値も重要な指標となります。糖尿病性腎症の場合はアルブミン値も要チェックです。
画像もしっかり見てください。例えば腎臓が萎縮している様子は、CTなどに比べ不鮮明なエコー画像でも確認することができます。CKDが進行していると明らかに、腎臓は小さくなってしまったり、血流が悪くなってしまったりしていますので、自覚症状がなくても状態は悪くなっていることを、理解しなければなりません。
軽症の人であっても、自分はまだ軽いから、と油断しないでください。進行の速さには個人差があり、急激に悪くなるケースもあります。重症度に関係なく、「客観的に」自分の病気のことを知ることが、CKDの進行を遅らせる最も重要なポイントです。そしてたとえ透析を検討せざるを得ない状況になっても、十分な準備期間を取ることができるのです。