シナリオは、基本と楽観と悲観の3通り設定する
(3)事業計画のベースとなる基本シナリオを設定する
4つの分岐点要因を抽出できたら、それらの組み合わせを検討します。例えば、コロナショックの影響が大きく経済が落ち込む場合と、落ち込み幅がさほど大きくない場合、自動車の電動化が急速に進む場合と緩やかに進む場合等のように、4つの要因ごとに2つずつ場合分けを行い、それぞれを影響の大きな順に並べていきます。そうすると、4つの要因について2つずつ場合分けができますから、すべてのケース分けをすると2の4乗で16通りの場合分けができます。
ケース分けをする場合は、後でどちらのケースになったか分るように、上下の2つの場合の分れ目を設定しておきます。例えば為替レートであれば、1ドル110円以上と110円未満のように円高・円安の基準を設定しておくのです。
そして、この中から、今後事業計画の期間(3〜5年)で、もっともありえそうな組み合わせを基本シナリオとします。基本シナリオの想定が決まったら、次に経営ビジョンや経営目標、経営戦略への示唆を検討します。コロナショックの影響が大きな一方で、自動車の電動化が急速に進み、外国人労働者が増加せず、企業のDX化が進むとしたら、自社・自事業のビジョンや事業戦略はどのような方向性かということを導き出すのです。
(4)代替シナリオも検討しリスクに備える
基本シナリオが設定できたら、次に代替シナリオを設定します。代替シナリオは、基本シナリオに対してより楽観的な方と、より悲観的な方の両方を設定しておくと良いでしょう。
組織の内部には、どちらかというと悲観的な人が多く、基本シナリオも多くは若干悲観的なシナリオになるケースがあります。このためより楽観的なケース設定もしておいた方が良いのです。あまり楽観的すぎるのもよくありませんが、現実には結果オーライ的な楽観的なケースもありうるのです。
また悲観的なシナリオは、悲観的な事を考えるのが得意な人がいるでしょうから、もしもの時のリスクを考えて、悲観的なケース設定を行います。その際には、悪くてもこれぐらいというボトムラインを押さえるという効果があります。最悪赤字は免れるようにとか、最低でもこれこれの売上高は確保できる等の見通しを立てるのに役立ちます。
社内でよく事業計画の前提について、もめることがあるのは、もともと楽観的な人と悲観的な人とがいて、彼らが自分の見方の方が正しいと主張するのでまとまらないわけです。そうであれば、基本シナリオ、代替シナリオA(楽観シナリオ)、代替シナリオB(悲観シナリオ)と3つ設定しておけば、社内の楽観論者・悲観論者それぞれを納得させられる計画が立案できるわけです。
(5)シナリオに対応した計数計画立てる
3つのシナリオに対応させて、経営目標も3つできますが、経営ビジョンはわざわざ3つにしないことが多いです。一方、計数計画は経営目標と対応しますので、基本、楽観、悲観と3通り立てます。また、活動計画はシナリオに対応させるケースとわざわざ対応させないケースに分れます。この辺りは、シナリオに合わせて戦略を変えるかどうかに依存することが多いので、一概にどちらとは言い切れません。状況に合わせて検討してください。
外部事業環境の前提はシナリオプランニングで複数設定する
井口 嘉則
株式会社ユニバーサル・ワイ・ネット 代表取締役
オフィス井口 代表