【関連記事】新型コロナ時代に勝つ「事業計画書」の書き方…3つのポイント
事業環境の変化は「シナリオプラニング」で複数想定
(1)シナリオプランニングの必要性
中期経営計画の策定をお手伝いした貿易会社で、過去の中計の振り返りをした際に、為替レートの前提条件が違ったので、途中で中計の運用を止めてしまったという話を聞きました。中期経営計画は、新しいことや既存のことを変えていくことに取り組む計画なので、運用を止めしまうと成果が上がりません。
貿易会社といえば為替レートの影響を大きく受ける業種ですから、複数の為替シナリオを前提条件として新たな中計を作る指導を行いました。そしたら、運用途中で為替レートが大きく動いたのですが、事前に考えておいた別のシナリオに切り替えて運用を行うことで、中期経営計画を完結させることができました。その結果、過去最高売上・最高利益を達成することができたのでした。
この事例のように、多くの会社で外部事業環境の変化を単一のシナリオで想定してしまって、すぐに使えない事業計画となり、また事業計画を立て直すということがよく行われています。
このため事業計画を立てる際には、外部事業環境の変化を複数想定して、それらが変わった際にはシナリオチェンジを行うようにしておくと良いでしょう。こうしたやり方をシナリオプランニングといいます。
シナリオプランニングというのは、もともとは米軍の作戦の立て方からきたものですが、それをビジネスにも応用して使うようになりました。
事業に影響のある4つの要因から未来を予測
(2)4つの分岐点要因
シナリオプランニングには、いくつかのやり方がありますが、お勧めしているのは、自社または自事業に影響を与える外部事業環境要因を抽出し、その中から影響度の大きなものを4つ選ぶ方法です。
この4つは、統計でいう独立変数である必要があります。よくある勘違いは、コロナが流行→入院患者が増加→医療崩壊が起きる→死者が増加というように考えるステップで、後ろの工程が前の工程の従属変数となっているので、独立変数とは考えられません。
一方、コロナショック、自動車の電動化、外国人労働者の増加、企業のDXの推進という4つは、それぞれ独立事象で、例えば自動車関連を対象としたIT企業にとっては、どれも事業に影響度が高い事柄で、一定の想定を置く必要があります。
シナリオプラニングは4つの分岐点要因を想定する