他方で、「総会で制限を決定」するのは難しい場合も
基本的な使用制限は管理規約で定めるべきとした事例
他方で、その後、類似の事案において、「専有部分の管理又は使用の調整に関する事項については、集会決議(普通決議)で定めることができず、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議(同法31条1項、以下「特別決議」という。)を要する規約でのみ定めることができると解することが、法文の文理に沿う解釈であると考えられる。」とした上で、
「もっとも、専有部分の管理又は使用の調整に関する事項について、規約で基本的な事項を定め、その範囲内での細則の決定を集会の決議に委任することは、相当な範囲内において許されると解される」とした裁判例【東京地判平成19・10・11判秘】も存在します。
この管理規約で定める必要があることの理由としては、①区分所有法18条を反対解釈し、店舗営業時間の制限は「共用部分の管理に関する事項」にあたらないこと、②専有部分については、本来それぞれの所有者がその意思に従って自由に管理および使用をすべきものであることを挙げ、この点に関する法解釈については前掲・東京高裁平成15年12月4日判決と明確に異なる解釈をとっています。
また、同事案においては、結論として、規約等に基づく差止請求は規約無効により理由がないとし、これに加えて区分所有法57条に基づく差止請求に関しても共同利益背反行為の該当性を否定し棄却しています。
個別の管理規約を確認の上、判断すること
以上からすれば、管理規約に「基本的な店舗営業の許否及び柔軟な対応が必要な事項(制限業種、時間等)に関しては使用細則に授権する」旨の定めがある場合に、総会の決議等によって営業可能時間等を授権の範囲内で変更することは認められる可能性が高いー方、規約に営業制限に関する定めがない場合に、総会の決議等によって創設的に営業制限を加えることは難しいと考えられます。
なお、総会の決議が「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」にも、区分所有法31条1項後段が類推適用され、当該区分所有者の承諾が必要になります【最判平成10・11・20判タ991・121)。