(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍だからこそ急成長、急拡大を続ける企業がある。 ※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

 

 

③アリエクスプレス(AliExpress)……アリババは、中国国外の消費者向けの電子商取引サイトにも商機ありと判断して、2010年にアリエクスプレスを開設した。元々、同サイトは、中国国内の中小の販売業者が海外顧客に商品を販売する場として開設された。今では国外の販売業者も出店し、世界の販売店が、世界の市場を相手に商売ができる場へと発展を遂げている。ロシアでは最も人気のある電子商取引サイトである。

 

④Tモール(天猫)……有名ブランドの真正品を販売するB2Cサイトである。偽物商品がはびこる中国の市場で生まれるべくして生まれたサイトである。このため、欧米のブランドにとっては、Tモールは5億人ものアクティブユーザーを擁する巨大な中国市場への進出に不可欠なルートとなっている。

 

⑤Tモールラグジュアリーパビリオン……売り手のブランドも消費者も、完全招待制のサイトで、Tモール内の特別エリアとして設定されている。アリババは高級品販売を拡充し、ルイ・ヴィトンやシャネル、グッチなどの150以上の高級ブランドの取り込みに成功している。ラグジュアリーパビリオン開業初年度のユーザー平均消費額は、15万9000ドルだった。

 

Tモールは有名ブランドの真正品を販売するB2Cサイトである。(※写真はイメージです/PIXTA)
Tモールは有名ブランドの真正品を販売するB2Cサイトである。(※写真はイメージです/PIXTA)

特定イベントをきっかけに実店舗に招待

Tモールの成功の一因に、販売チャネルのこだわりを捨て、デジタル(オンライン)とフィジカル(実店舗)の垣根を越えて、消費者の動きを点ではなく、1本の線として捉えた点が挙げられる。アリババのヨーロッパ地区ファッション・高級品担当ディレクター、クリスティーナ・フォンタナに取材したところ、1つひとつの点は相互に密接につながり合っているという。

 

フォンタナが例として挙げてくれたのは、Tモールサイトに出店している、あるファッションブランドだ。同ブランドでは新店舗の出店に最適な立地を検討していた。

 

「このブランドでは、北京のいくつかの地区を候補に挙げていたため、暫定的に期間限定のポップアップストアを開設しました。それがとても素敵な店舗だったんです。そこで私たちは同じ体裁で3Dで再現したショップをオンラインにも開設したんです。同社では、ポップアップストアを開設した地区に、本格的な旗艦店を出店した場合、十分な客足が確保できるかどうかを見極めようとしていました」

 

そこで同ブランドとアリババの双方が持つデータを駆使して、ポップアップストア関連オンラインメディアを視聴した主要顧客を特定した。その後、この情報から特定されたユーザーをポップアップストアのグランドオープンに招待した。オープンイベントの模様はオンラインで配信され、何百万もの消費者に告知された。

 

つまり、特定の顧客データを使って価値の高い顧客を割り出し、特定イベントをきっかけに実店舗に招待し、イベントの模様はオンラインでストリーミング配信して膨大な数のユーザーにも体験してもらうことが可能なのだ。オンラインでの配信に対するユーザーの反応も、アリババや同ブランドにとって貴重なデータとなる。メディア、エンターテインメント、顧客の反応、データ、知見という循環型エコシステムが成立しているのだ。

 

■インターフェイスとしての店舗

 

世界最大級のオンライン小売業者であるアリババが、実店舗は「DX(デジタルトランスフォーメーション)化」の重要な要素だと主張していること自体、何やら狐につままれたような気がしないでもない。同社は、実店舗として2つの小売りチェーンを運営している。1つが食料品チェーンの「盒馬鮮生(Freshippo)」で、以前は「盒馬(Hema)」と呼ばれていた。もう1つは、「銀泰百貨(Intime Department Store)」という高級百貨店チェーンで、2017年の買収でアリババ傘下となった。

 

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