(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍だからこそ急成長、急拡大を続ける企業がある。 ※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

Amazonは「エブリシング・ストア」を目指す

いったいアマゾンはどこまで大きいのか。作家のスコット・ギャロウェイは次のように言う。

 

<アマゾンの株価が7%下落したら、ボーイングの時価総額が吹き飛ぶほどである。アマゾンは今まさにそういう状況にある。たった1日の取引でボーイングの時価総額相当分が増えたり減ったりしているのである。この巨大すぎる企業について語る場合、1日の株の値動きでボーイングという企業を売ったり買ったりしていると考えてもいい。>

 

同様に、アマゾンが未進出分野にちょっと関心を見せるだけで、その分野の既存企業の市場価値を下落させるほどの影響力がある。たとえば、2017年にアマゾンが家電販売への進出を発表したところ、ホームセンターのホームデポ、家電量販店のロウズやベストバイ、ワールプールの時価総額のうち、合わせて125億ドルが吹き飛んだ。たった1日の出来事である。

 

これでもアマゾン支配の構図が信じられないというのなら、2019年にフィードバイザーがアメリカの成人2000人を対象に実施した調査を紹介しよう。それによれば、「オンラインショッピングならアマゾンで買う」との回答が89%に上った。これがプライム会員に限定すると、96%にまで増加する。

 

だからといって、アマゾンが盤石とは限らない。実際、隙はある。同社は、冷酷な幹部が大手を振る労働環境、さらに劣悪な倉庫の従業員の労働条件など、悪評に手を焼いている。また、アマゾンは自ら小売業者として商品を販売する一方、外部小売業者がアマゾン内で商品を販売する「マーケットプレイス」も運営している。

 

アマゾンは自社の販売が有利になるように外部業者の販売データを不正に利用したという不誠実な前歴もある。ときにはアマゾンでの商品検索結果を表示する際、アマゾンが販売する商品の価格を外部業者の商品より下げて自社に有利にすることで、競合商品を徹底的に追い落とすことまでやってのける例もあった。

 

こうした逆風もなんのそので、大多数の人々が病気や雇用、社会不安に気を揉んでいた最中の2020年7月20日、たった1日でジェフ・ベゾスは個人純資産を130億ドルも増やしていた。その結果、個人資産総額はニュージーランドの年間GDPに匹敵するまでになったのだ。2020年8月には、アマゾンの時価総額が1兆7000億ドル弱にまで増加し、わずか7カ月で70%増を記録している。

 

パンデミックの嵐が小売業界全体に襲いかかった一方、アマゾンはその嵐を追い風に、ジャーナリストのブラッド・ストーンの言葉を借りれば「エブリシング・ストア(何でも買える店)」というゴールをめざして順風満帆で進んでいた。
 

 

ダグ・スティーブンス
小売コンサルタント

 

 

小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

ダグ・スティーブンス

プレジデント社

アフターコロナに生き残る店舗経営とは? 「アフターコロナ時代はますますアマゾンやアリババなどのメガ小売の独壇場となっていくだろう」 「その中で小売業者が生き残る方法は、消費者からの『10の問いかけ』に基づく『10の…

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