(※写真はイメージです/PIXTA)

商品のライフサイクルが長く、在庫を積み上げても問題のなかった高度経済成長期とは違い、今の企業に求められる商品やサービスの供給手段は大きく変わっています。「作れば売れる」時代が終わった今、最小の努力で最大の効果をあげる「経営戦略」で成功した企業の事例をみていきます。

リードタイムを短縮し、市場動向への迅速な対応を実現

創業からずっと精密機器を製造している製造装置メーカーS社は、メイン製品の生産リードタイムが3カ月かかっていました。

 

営業サイドも製造サイドもそれが当たり前となっていたのですが、競合他社は同じ製品をその半分のリードタイムで顧客に提供しています。S社の市場シェアは徐々に奪われていき、決算で赤字を計上してしまいました。

 

年度末の在庫を調べてみると、莫大な数が残っていました。その原因はすぐに分かりました。「長い生産リードタイム」と「予算の縛り」です。

 

営業サイドは、3カ月先の製品の仕上がりを見込んで販売計画を作成します。しかし、3カ月先の顧客動向を正確に読むことは困難です。そのため、多めに見込むしかありません。

 

さらに予算必達の風潮が強く、一度立てられた販売計画の下方修正は許されませんでした。工場側も予算必達に向けて生産を続けた結果、年度末になって売れ残った在庫がS社の資金繰りを悪化させていたのです。

 

S社の社長は、販売の状況を見つつ迅速に市場動向に対応できる体制にしなければならないことを痛感しました。生産のリードタイムを短縮し、早期に生産の下方修正や増産を指示できる組織にするためにSCMに着手しました。

 

最初に手をつけたのは、生産計画作成のサイクルを変更することでした。それまでは月単位で生産計画を作成していましたが、週単位に変更しました。

 

生産サイドは大変ですが、これで迅速に生産数を上げたり、下げたりすることができるようになりました。

 

次に、生産ロットをできるだけ小さい単位で、できれば1台単位で製造できるように、大幅に生産方法を変更しました。さらに、3カ月先の生産指示を4週先の生産指示に変更しました。

 

これらの改革によって、生産のリードタイムは従来の3分の1に短縮されたのです。リードタイムが短縮されたことによる事業への効果は劇的でした。S社の在庫は半分以下になり、タイムリーな製品供給体制で受注も増え、資金繰りが驚異的に回復しました。S社の社長はSCMの威力にただ驚嘆するばかりでした。
 

[図表2]S社が取り組んだSCMフロー
[図表2]S社が取り組んだSCMフロー

 

 

東 聖也

株式会社オンザリンクス

代表取締役

 

 

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※本連載は、東 聖也氏の著書『WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX』(幻冬舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX

WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX

東 聖也

幻冬舎

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