(※写真はイメージです/PIXTA)

近未来のロジスティクスは、AIを活用した需要予測が重要な意味合いをもつと、物流コンサルタントを手がける株式会社オンザリンクス代表の東聖也氏はいいます。業界の垣根を越えて需要予測を共有するための「プラットフォーム」の構築が進んでいる現在、近未来の物流はどのような姿に変化していくのか、みていきましょう。

2030年の産業革命はロジスティクスが先頭に立つ

物流データをマーケティングに活用するには、サプライチェーンにおけるコミュニケーションを活発にする必要があります。この場合のコミュニケーションとは、情報の共有という「技術的側面」と、サプライチェーン内の企業間の信頼関係という「心理的側面」の2つの意味があります。

 

多くの企業にとってSCMやロジスティクスは未知の領域です。その証拠に、高度に形式化されたコミュニケーション手順を用いて、サービスサプライヤーと外部連携を進めているサプライチェーンに出合うことは、まれです。

 

しかし、ロジスティクスを効率化し、さらにデータを高度利用するにはサプライチェーン内のコミュニケーションが欠かせません。サプライヤー間でより高度なコミュニケーションを確立するにはどうすればいいでしょうか。重要なポイントは次の3つです。

 

1.サービスサプライヤーとの信頼関係構築

2.AIや需要予測といった最新技術への投資

3.パートナーとの戦略的提携の強化

 

特に2は重要です。AIブームによって、需要予測が再び注目を集めています。需要予測は、ロジスティクスの効率化に役立ちますが、マーケティングに欠かせない要素です。

 

これまでもサプライチェーンの間で需要予測は行われてきましたが、サプライチェーン全体の誤差を減少させることはできませんでした。

 

小売り側、卸売り側、製造側(メーカー)がそれぞれ独自の方式とシステムで需要予測し、そこで設定された価格や生産数がロジスティクスにも大きな影響を与えてきました。

 

近未来のロジスティクスでは、AIを活用した需要予測が重要な意味をもちます。私の予測では、これまで複数箇所に存在していた需要予測の仕組みは、ロジスティクス領域1ヵ所に集約されるでしょう。

 

今後はロジスティクス領域でAIを活用して精度の高い需要予測が行われるでしょう。これまでのように、一部の企業のデータだけではなく、ビッグデータや天気予報などのデータを用い、これまでとは次元の違う需要予測がすでに実用化に向けて動いています。

 

それにより、これまで予測のできなかった需要を、かなりの確率で導き出すことも可能になるはずです。各サプライチェーンの計画は、前倒しされ必要最低限の在庫保有、物流を実現しつつ、各プレイヤーの利益を最大化します。

 

2030年の近未来物流に向けて製・配・販が協働で需要予測を開発し、共有するための「プラットフォーム」の構築が進んでいます。最新技術を活用した需要予測の共同利用により、注文量のミスマッチを解消し、在庫削減・食品ロス削減・機会ロス削減の果実をサプライチェーン全体で享受することが可能になります。

 

消費者、小売り、卸売り、製造(メーカー)を含めた社会全体で利益を共有できる「2030年の産業革命」はロジスティクスが先頭に立ち、引っ張っていかなければならないと私は考えています。

 

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※本連載は、東 聖也氏の著書『WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX』(幻冬舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX

WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX

東 聖也

幻冬舎

多くの中小製造業では、倉庫管理や製品を配送する物流工程に課題を残している可能性があります。例えば、多くの倉庫ではいまだ手書きで帳簿をつけたり、エクセルなどで手動で製品の管理を行っています。また、「手配する」「梱…

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