過去の実績に固執した製造業経営者の致命的な判断ミス
組織における最大の改革とは、すでに設定されている目標に内面的な目標を合致させることです。経営者の意志は、その実践を通して表れます。
何よりもまず、社員に「改革が必要であり、今それが自分たちに求められている」ことを理解してもらうことが重要です。
次に、その理解を消極的なものではなく、積極的な認識へと変換し、それを実践させ拡大しなければなりません。そのために経営者は自らの言葉で「なぜ、それをする必要があるのか」「目標を達成することで、自分たちの状況がどう変わるか」を伝えます。
最後に、目標を達成することが「自分たちにとっての使命である」との信念をもつように働きかけます。社員が改革の実践すべき義務を理解し、積極的に実践できる環境が調うことによって、実践スピードが飛躍的に増すのです。
製造業の多くは顧客からの発注に応えられるよう、常に一定の在庫を抱えています。受注したときに在庫がなければ、即時納品ができず機会損失につながる可能性があるからです。
T社も即時納品をできるように常に一定量の在庫を抱えていました。しかし、市場の急激な変化により、創業以来最大のピンチを迎えます。
T社はWEBカメラなどの映像用電気機器の製造・販売を手掛けており、シックなデザインと他社にはない独自の機能が市場で顧客ニーズをとらえて安定的な売上を確保してきました。
しかし、昨今のオンラインブームにより競合メーカーが登場し、多くの企業がしのぎを削るレッドオーシャン市場になってしまったのです。
ある競合メーカーは海外の安価な部品を利用してT社と同じ機能を実装し、価格も2~3割安にして製品を投入してきました。それでもT社は技術革新型の製品で成功した経験がありましたから、高価な専用部品にこだわり続けました。
「安かろう、悪かろう」では、競合他社の製品を顧客が選ばないだろうと、T社の社長はたかをくくっていたのです。
実際には違いました。市場の競争は日ごとに激しさを増し、徐々にT社の商品は市場から取り残されていったのです。
T社の社長は「2~3年というレベルではなく、わずか1年で立場が逆転してしまった」と、これまでに経験したことのない市場変化のスピードに驚きました。
また、競合他社は汎用部品を使っているので、専用部品のように調達に時間がかかりません。T社よりも少ない在庫でタイムリーに製品を市場に投入することができました。T社の倉庫には売れ残った製品と、高価な専用部品の在庫が山のように積まれていきました。
T社は急速に資金繰りが悪化していったのです。
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