(※写真はイメージです/PIXTA)

従来、製造業の多くは顧客からの発注に対応できるよう、常に一定の在庫を抱えていました。しかし、市場の変化スピードが急速に早まっている昨今、従来の経営手法が通用しなくなっています。

過去の実績に固執した製造業経営者の致命的な判断ミス

組織における最大の改革とは、すでに設定されている目標に内面的な目標を合致させることです。経営者の意志は、その実践を通して表れます。

 

何よりもまず、社員に「改革が必要であり、今それが自分たちに求められている」ことを理解してもらうことが重要です。

 

次に、その理解を消極的なものではなく、積極的な認識へと変換し、それを実践させ拡大しなければなりません。そのために経営者は自らの言葉で「なぜ、それをする必要があるのか」「目標を達成することで、自分たちの状況がどう変わるか」を伝えます。

 

最後に、目標を達成することが「自分たちにとっての使命である」との信念をもつように働きかけます。社員が改革の実践すべき義務を理解し、積極的に実践できる環境が調うことによって、実践スピードが飛躍的に増すのです。

 

製造業の多くは顧客からの発注に応えられるよう、常に一定の在庫を抱えています。受注したときに在庫がなければ、即時納品ができず機会損失につながる可能性があるからです。

 

T社も即時納品をできるように常に一定量の在庫を抱えていました。しかし、市場の急激な変化により、創業以来最大のピンチを迎えます。

 

T社はWEBカメラなどの映像用電気機器の製造・販売を手掛けており、シックなデザインと他社にはない独自の機能が市場で顧客ニーズをとらえて安定的な売上を確保してきました。

 

しかし、昨今のオンラインブームにより競合メーカーが登場し、多くの企業がしのぎを削るレッドオーシャン市場になってしまったのです。

 

ある競合メーカーは海外の安価な部品を利用してT社と同じ機能を実装し、価格も2~3割安にして製品を投入してきました。それでもT社は技術革新型の製品で成功した経験がありましたから、高価な専用部品にこだわり続けました。

 

「安かろう、悪かろう」では、競合他社の製品を顧客が選ばないだろうと、T社の社長はたかをくくっていたのです。

 

実際には違いました。市場の競争は日ごとに激しさを増し、徐々にT社の商品は市場から取り残されていったのです。

 

T社の社長は「2~3年というレベルではなく、わずか1年で立場が逆転してしまった」と、これまでに経験したことのない市場変化のスピードに驚きました。

 

また、競合他社は汎用部品を使っているので、専用部品のように調達に時間がかかりません。T社よりも少ない在庫でタイムリーに製品を市場に投入することができました。T社の倉庫には売れ残った製品と、高価な専用部品の在庫が山のように積まれていきました。

 

T社は急速に資金繰りが悪化していったのです。

 

[図表1]組織における改革に必要な要素
[図表1]組織における改革に必要な要素

 

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※本連載は、東 聖也氏の著書『WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX』(幻冬舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX

WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX

東 聖也

幻冬舎

多くの中小製造業では、倉庫管理や製品を配送する物流工程に課題を残している可能性があります。例えば、多くの倉庫ではいまだ手書きで帳簿をつけたり、エクセルなどで手動で製品の管理を行っています。また、「手配する」「梱…

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