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物流DXは長期視点での投資が不可欠
経営者にとって大きな悩みの一つは、事業を取り巻く環境が制約条件だらけであることです。しかし、法律など自社ではどうにもできない制約はごく一部しかありません。
経営者が制約条件として認識しているものの多くは社内事情から発生しています。
例えば、設備投資をする場合、費用対効果は大切ですがそれが前提になってしまうと、現状打破のきっかけをつかむのは難しくなります。
例えば、在庫管理システムを一から見直して新しく導入を考えたとき、過去に失敗した経験があるとの理由だけで投資が見送られることがあります。一度の失敗が社内ではタブーとして扱われ、知らず知らずのうちに多くの制約をつくっています。
それに縛られて現状打破ができなくなってしまうのです。
大切なのは3年後、5年後のあるべき姿を経営者と現場が一緒になって頭に描くことです。
そこに向かって行くためには制約条件となっているものは何か、制約条件を外すことは本当に不可能なのか、もう一度考えてみてはいかがでしょうか。
私はこれまでの経験から「在庫について課題を抱えていない企業は1社もない」と自信をもって言えます。もし「在庫については何の問題もない」と断言する経営者がいれば、それは問題意識が希薄であると言わざるを得ないでしょう。
「在庫」の見方は部門や立場によって異なる
在庫に対する認識は部門や立場によってさまざまです。常にすれ違いが発生します。
まったく同じ在庫数を見ても「過剰」と認識する人もいれば、「不足」と認識する人もいます。また、在庫の精度が悪い場合に「入庫に問題がある」と考える人がいれば、「出庫に問題がある」と考える人もいます。
また、在庫についてよくある問題として「責任の所在が曖昧になりがち」であることが挙げられます。ある人は「製造部門が無計画につくり過ぎるからだ」と言いますし、別の人は「営業部門が受注予算を達成しないからだ」と言います。
そしてもう一つ、在庫問題についての施策は「長続きしない」特徴もあります。なぜなら、改善しなくても事業は継続できてしまうからです。
在庫問題が企業の業績に直接的に影響を与えていることが現場からは見えにくいからでしょう。
「デジタル化」、「SCM」…在庫管理の新たな要素
これを解消する手段として、在庫のデジタル化が注目を集めています。そのためか、当社にも物流をデジタル化したいという漠然とした内容の相談が増えてきました。
コロナ禍で何か打てる手はないかと模索しているのではないでしょうか。
また製造業では、SCMの要件も変化しています。在庫削減や業務効率化といった従来のテーマに加えて、輸配送最適化や在庫をモノとしてではなく金額として管理したいという新たな要素が求められるようになってきました。
製造業においては、在庫はさまざまな役割をもっています。役割以上の在庫はムダとなりますが、役割を果たしている在庫は必要な在庫です。
この在庫が果たす役割が多岐にわたる点が製造業の在庫管理の難しさを物語っています。
在庫を多めに抱えると企業内のプロセス上の問題が見えなくなってしまいます。例えば、販売計画の精度が悪くても在庫を多めにもっておけば、販売実績が大幅に計画とずれていても顧客に迷惑が掛かることがないので、発見や対策が遅れてしまうことになります。
また、生産が計画どおりに進まなくても、在庫が余分にあればその先の工程に迷惑をかけることがないため、生産計画や生産方法の見直しのきっかけをつかみにくくなります。
さらに営業部門、生産部門、物流部門の間で情報連携がタイムリーに行われていなくても、在庫が余分にあることでそうしたコミュニケーションの問題が隠れてしまって、改善がされにくくなります。
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