(※写真はイメージです/PIXTA)

商品のライフサイクルが長く、在庫を積み上げても問題のなかった高度経済成長期とは違い、今の企業に求められる商品やサービスの供給手段は大きく変わっています。「作れば売れる」時代が終わった今、最小の努力で最大の効果をあげる「経営戦略」で成功した企業の事例をみていきます。

在庫の分散管理で、収益性を劇的に向上

中堅の医療機器メーカーのM社は、病院や医療施設、介護施設などに医療用の機器を納入しているメーカーです。

 

長い間、事業は堅調に成長を続けていましたが、ここ数年は競合他社の台頭もあり、機器の販売は鈍化気味で、利益率も徐々に下がり始めていました。

 

原因を調べてみると、ここ数年は製品の販売に集中するあまり、消耗品の供給で他社より後れを取り、顧客へのサービス力が低下していました。機器の在庫は常に過剰気味で、消耗品の在庫は常に不足気味であることも分かりました。消耗品は即納が要求されますので、欠品が多い状態は消耗品市場で他社に大きく水をあけられてしまいます。

 

M社の社長は、この事態を自社ビジネスの転換点として前向きにとらえ、トップダウンで倉庫管理を改革することにしました。まず、弱みとなっていた消耗品の在庫を増やし、顧客の近くで在庫を保有して受注後24時間以内に納入できる体制を整えました。

 

これにより消耗品の在庫は1・5倍に増えましたが、消耗品による売上も大幅に増え、顧客満足度も向上し、製品の受注増加につながりました。

 

次に製品の過剰在庫にメスを入れました。製品を提供価格帯で大きく3段階に分けて、最も高価な価格帯の製品は在庫を保有せず、半製品状態で受注を取り、顧客の求める機能や仕様に変えて納品する方式に変えました。

 

見込み生産型から受注組立生産型へ大きく転換したのです。その結果、大幅に在庫を減らすとともに、顧客満足度を向上させることができ、収益性も大きく改善しました。

 

[図表1]M社が取り組んだSCMフロー
[図表1]M社が取り組んだSCMフロー

 

次ページリードタイムを短縮し市場動向への迅速な対応を実現

※本連載は、東 聖也氏の著書『WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX』(幻冬舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX

WMS(倉庫管理システム)で実現する中小製造業の物流DX

東 聖也

幻冬舎

多くの中小製造業では、倉庫管理や製品を配送する物流工程に課題を残している可能性があります。例えば、多くの倉庫ではいまだ手書きで帳簿をつけたり、エクセルなどで手動で製品の管理を行っています。また、「手配する」「梱…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録