冒頭のケースにおける可否は?
このケースにおいては、ペット飼育について従前管理規約は空白になっていましたが、新たに飼育禁止の管理規約の変更をしようとしています。
したがって、当該変更が「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすとき」にあたり、ペットを飼育中の区分所有者らから承諾を得なければならないのではないかが問題になります。
この点、ペットに関する苦情やトラブルが増加してきたとあるように具体的な問題が生じていますから、規約変更に関して合理性・必要性があるといえます。他方で、当該マンションでは、事実上飼育を容認してきたという事情があります。
加えて、近年ではペット飼育可とするマンションも増加していることも踏まえれば、ペット飼育が可能であるとの認識のもと区分所有を取得した区分所有者や、つい最近ペットを飼い始めた区分所有者もいる可能性があります。
そのため、これらの区分所有者に対しペットの飼育を全面禁止するというのは規約の合理性・必要性に比して受忍限度を超える不利益を及ぼす可能性が高いといえます。
したがって、本ケースにおいて、すでにペットを飼育している区分所有者らから承諾がなければペット飼育を全面禁止する規約は新設できず、上記のとおり、少なくとも経過措置等を設ける必要があるでしょう。
香川 希理
香川総合法律事務所 代表弁護士