しかし、平成22年以降は「一部認容が93.8%」に
イ 現在では、経過措置、一部制限措置を定める段階的な規約変更が無難
前掲・横浜地裁平成3年12月12日判決では、当時のマンションにおけるペット飼育の状況も踏まえ特別の影響が否定されました。
しかし、平成25年度マンション総合調査(国土交通省)によると、ペット飼育に関する管理規約の定めは、完成年次が平成2年から平成6年のマンションでは、禁止65.1%、規則なし8.0%であったところ、完成年次が平成22年以降のマンションについては、禁止2.1%、一部認容93.8%、規則なし1.0%となっています。
つまり、同判決当時と現在ではマンションにおけるペット飼育の可否について原則と例外が逆転しています。
したがって、ペット飼育者から規約変更の承諾が得られない場合、現在飼育している一代限りでの飼育は認めるなどの経過措置を設ける、または苦情の原因となるようなペットの飼育態様を制限する一部制限規約とするなどの変更にとどめるほうが無難です。
(3)補論――規約の一律適用と「一部の区分所有者」との関係
この点、ペットの飼育を全面禁止するなど管理規約変更の影響が区分所有者全体に一律に及ぶ場合には、個々の区分所有者の承諾は必要でない旨説明されることがあります(稲本洋之助、鎌野邦樹「コンメンタールマンション区分所有法 日本評論社、1997、260頁)。この点、規約の適用範囲や効果が一律であることは必ずしも影響が一律であることを意味しない点に注意が必要です。
前掲裁判例(原審は【横浜地判平成3・12・12】、控訴棄却【東京高判平成6・8・4】)も文言上は一律適用されるペット禁止規約について、具体的事情に立ち入って「特別の影響」の有無を判断しています。