精神科外来が「5分で診察終了」せざるを得ない恐ろしい理由【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

精神科での薬物治療は、医師にだけ可能な行為です。問診の上での処方が重要ですが、単に「薬を処方するだけ」となりがちであるのが精神医療の現実です。「精神科医の対人援助スキルが乏しい」と医療法人瑞枝会クリニック院長・小椋哲氏は語ります。なぜ精神医療の現場には、こうした問題が起きているのでしょうか。

精神科医の「対人援助スキル」が乏しいワケ

精神科医が適切な対人援助を提供できない原因は、さまざまあると考えられます。

 

適切な対人援助ができなくても、医師にしかできない診断書と処方箋の発行という定型的なサービスを受けるだけである程度満足する患者が一定数いることがその一つです。

 

実際、精神科医が提供する医療にさほど期待はしておらず、会社を休むための診断書を出してくれればいいとか、睡眠薬を処方してくれるだけでいいといったニーズで来院する人もいます。また、適切な援助ができていなくても、こうした最低限の診察を繰り返している間に、時間が経つことで自然に治っていく患者がいるのも事実です。

 

さらに、精神科医として独り立ちする前に学ぶことの多くが、精神疾患に関する知識とそれに対応する選択薬の知識にとどまっていることも原因の一つと考えられます。

 

専門医になる前に、十分な対人援助の教育や研修を受けたという精神科医は、極めて少ないです。対人援助の基本的なツールとして評価されている認知行動療法ですら、それを実践できるスキルがなくても精神科専門医の資格は取得できてしまうという実情があります。

 

診断をつけて薬を出すことはほかの職種ではできない行為であるため、優先的に学ぶカリキュラムになっているのはある意味当然のことだといえます。

 

ただ、それはあくまでも対人援助の一部分に過ぎません。まずは、「薬の処方だけ」というレベルから、薬物治療と呼べるレベルにまでスキルを向上させたうえで、その薬物療法も、特定のボトルネックの一つを解消させる手段に過ぎないと自覚することが大切です。

 

たとえ診断名は同じであったとしても、患者によって抱える問題やボトルネックは大きく異なります。苦痛の原因となっている患者固有の問題を発見し、それを分かりやすく患者本人に伝え、解消するための提案をし、患者自身の理解と行動を促すのが本来の対人援助なのです。

医療法人瑞枝会クリニック 院長 精神科医

1968年生まれ、鳥取県出身。
2005年熊本大学医学部医学科を卒業後、2007年東京大学医学部附属病院精神神経科に入局。
東京都立松沢病院、東京大学医学部附属病院(助教)、宇治おうばく病院などの勤務を経て、2015年瑞枝カウンセリングオフィスを開所。
瑞枝カウンセリングオフィスでの心理サービスを、精神科保険医療のなかでも展開するため、予約診療を自在に組み合わせた「瑞枝会モデル」を構築。
その実践の場として、2016年瑞枝クリニックを開業し、2018年医療法人瑞枝会クリニックに改組。
小学生時代に米国現地学校へ通い人種差別を経験。
中学では不登校となり児童精神科を受診、高校では精神的危機に陥り中退するなど、精神科ユーザーとしての苦しみに共感できる素地がある。

著者紹介

連載「精神科医が語る」医療現場の現実

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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