生活習慣病が医療費の3割、死因の6割
日本では、慢性疾患の中でも、糖尿病、高血圧症、がん、心疾患、脳血管疾患などの生活習慣病が国民医療費の約3割を占めており、死亡の割合は約6割に及んでいることから、予防や重症化防止の対策が行われている(厚生労働省生活習慣病対策室,2009)。
厚生労働省の患者調査における傷病に関する報告によると、2008年には高血圧症疾患は796.7万人、糖尿病は237.1万人、脳血管疾患は133.9万人であったが、2017年には高血圧症疾患は993.7万人、糖尿病は328.9万人、脳血管疾患は111.5万人であり、高血圧症疾患は197万人、糖尿病は91.8万人増加している。一方、脳血管疾患は22.4万人減少している(厚生労働省保健統計室,2019b)。
一般的な感染症は長期治療が不必要であり、重症化しないようにコントロールすれば、通常、数回の治療で終了となる。しかしながら、生活習慣病を含めた慢性疾患の治療は長期的であり、定期的な検査や治療、服薬などの医療管理が必要となる。そのため、慢性疾患患者に対しては継続受診行動を促す必要があり、国民の健康を守るためには不可欠である。この慢性疾患に対する医療管理の多くは診療所が担っている。
厚生労働省は、図に示す糖尿病等の生活習慣病の発症予防と重症化予防の流れを示している。
【第1期】不適切な食生活や運動不足、ストレス過剰、睡眠不足、飲酒、喫煙など、不適切な生活習慣が原因となり、【第2期】メタボリックシンドローム予備軍である境界領域期に移行する。ここでは、肥満、高血圧、脂質異常、高血糖の身体変化が起こる。
この段階で改善が行われない場合、【第3期】生活習慣病である、肥満症、高血圧症、高脂血症、糖尿病などが発症し、これらの罹患者はメタボリックシンドロームに該当する。
さらに、保健指導や医療による改善が行われない場合、【第4期】重症化や合併症が起こり、心筋梗塞や狭心症、脳出血や脳梗塞の発症や、糖尿病による人工透析や網膜症による失明が予測される。
【第5期】生活機能の低下や要介護状態に陥り、場合によっては死亡につながる(厚生労働省生活習慣病対策室,2013)。
生活習慣病を含めた慢性疾患を予防するためには、早期の健診や適切な保健指導、生活習慣病発症時の定期的な受診が重要であり、その促進が重度化を防ぐことにつながる。したがって、継続的な受診による医療管理は、これらの疾患の重症化を防ぐために有効な手立てとなる。その結果、透析などによる莫大な医療費などのコスト削減にもつながる。