早期発見、重症化防止に必要な医療管理
厚生労働省は慢性疾患の増加に伴い、慢性疾患対策の更なる充実にむけて検討会を設置し、協議を進めている。厚生労働省生活習慣病対策室の報道発表資料によると、慢性疾患はその発症予防から合併症対策に至るまでの一連の過程において、総合的な視点に立ち、慢性疾患の予防に資する必要がある。
そのため、知識の一層の普及啓発や、提供される保健医療サービスの質を高める努力を行う。それとともに、慢性疾患と向き合う患者を家族、医療機関、企業など、多種多様な関係者、関係機関が地域において主体的に関与することにより、社会全体で支えていくことが求められている。
国は、それぞれの関係者の役割が明確になるような体系づくりなど、基盤となる環境の整備を強力に推進していくことが重要であることを示している。また、糖尿病など既存の施策の対象となっている慢性疾患は、その重症化や合併症によりQOL(Quality of Life:生活の質)の低下や死亡につながることが多い。
そのため、これらの疾患に対する効率的・効果的な啓発・普及活動を一層推進し、健診の受診率の向上に努めるとともに、関係医療機関等の連携をより一層促進させていくことが必要であると指摘している。
慢性疾患は、自己による努力と医療機関による医療管理が必要であり、長期的で定期的な検査や治療、服薬、リハビリテーションや食事制限などを含め、継続的な治療と医療管理が不可欠となる。この医療管理は、重症化の防止、早期発見を目的とし、厚生労働省は、かかりつけ医が担うことを推奨している。仮に、管理が適切に行われずに慢性疾患が重度化した場合は、致死的な疾患を発症させる。
したがって、医療機関は、かかりつけ医機能に伴う医療管理、そして、慢性疾患を悪化させず、新たな病気の早期発見に注力する必要がある。そのためにも、生活習慣病を含めた慢性疾患患者のインサイトを探り、患者を継続的な受診行動に導くための、情報提供の方法や受診先の選択などを検討する必要がある。
杉本ゆかり
跡見学園女子大学兼任講師
群馬大学大学院非常勤講師
現代医療問題研究所所長