病院の広告はどこまで可能なのか…医療マーケティングの限界 (※画像はイメージです/PIXTA)

医療マーケティングの重要性は理解されても、診療報酬制度によって価格の差別化はできません。さらに医療法による広告規制によって、病院のPRが制限され、医療マーケティングの限界が指摘されています。※本連載は杉本ゆかり氏の著書『患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング』(千倉書房)の一部を抜粋し、再編集したものです。

【期間限定/参加特典付】
医師だけしか買えない「不動産投資物件」ご紹介WEBセミナー 

医療マーケティングでは何ができるのか

(1)医療分野でもマーケティング活動は必要である

 

Kotler(1982)は、1975 年に『非営利組織のマーケティング戦略』を出版し、「マーケティングとは、分析、計画、実行および管理を含む経営管理のプロセスである」と定義を示したうえで、病院をはじめとする非営利団体でのマーケティングの性質、役割や分析、計画などの重要性を指摘した。ここでは、医療機関が直面する主要なマーケティング課題について、以下のような問題を報告している。

 

①患者に対して退院時に調査したところ、看護が不十分で食事はまずく、病院は暑すぎて、見た目にもがっかりするような様子である。

 

②近郊に新しい病院が2つできて、何人かの医師とともに、この病院を利用していた患者たちは、新しい病院へ移ってしまった。

 

③全体的な患者数が減少してきている。

 

これらの問題は、①医療サービスの低下、②競合の登場と競争力の低下による患者の他院へのスイッチ、③患者のロイヤルティが低下し、患者数が減少したことを示している。これは、本稿が示す医療マーケティングにおける患者インサイトで取り扱う問題と類似している。

 

一般的な理論として、マーケティングとは、顧客に向けて価値を創造、伝達、提供し、組織および組織を取り巻くステークホルダーに有益となるよう、顧客との関係性をマネジメントする組織の機能および一連のプロセスである(Kotler & Keller,2006)。

 

マーケティング活動は、マーケティング・ミックスと言われるツールを使用する。このツールは、マーケティングの4つのP(4P)とも呼ばれ、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の4つに大きく分類されている(Kotler & Keller,2006)。

 

このProductとはどんな商品やサービスを提供すべきか、Priceはどのような価格で売るべきか、Placeはどの流通経路を通してどのように売るべきか、Promotionはどのようにして買い手に知ってもらうべきかを意味し、マーケティングの立案・実行時に必要な4つの基本的要素として考えられている(田中,2005)。なお、Placeは、流通論における小売業のマーケティング・ミックスの視点で考えると、品揃え(品目や構成)やアクセス(立地場所や営業時間帯)を示す(渡辺ほか,2008)。

 

4Pを医療分野に当てはめると、製品(Product)は、検査、診断、治療や処置、投薬、それらの説明や服薬指導など医療行為や患者対応を含め、様々な医療サービスとそれらの質を示す(表1)。

 

価格(Price)は、治療や薬の値段を示すが、日本の場合、診療報酬や薬価など、国により決定されている。全額患者自己負担の医療を除き、基本的には各医療機関が決定できない。

 

流通(Place)は、診療科の標榜、使用薬剤・材料の採用や、品ぞろえ、仕入れ、医療機器の決定・管理、在庫管理などのロジスティクス、診療時間や休診日をはじめ、医療機関の立地や交通手段などアクセスに関する利便性が該当する。

 

プロモーション(Promotion)は、医療機関の広告や患者への情報提供を示す。最近では、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)による、医療機関や製薬会社、患者会の活動報告や情報提供が行われている。ただし、医療分野では多くの規制があり、広告についても制限されている。

 

【表1】マーケティングの4P と医療分野でのマーケティング4P

 

跡見学園女子大学兼任講師
群馬大学大学院非常勤講師
現代医療問題研究所所長

中央大学大学院戦略経営研究科修士課程(MBA)を首席で修了、同大学院同研究科博士課程にて博士(経営管理)取得。医療福祉専門学校の学校長を経て現職。医師会・医療機関・製薬会社等で講演活動を行う。専門は医療マーケティング論、マーケティング論、企業マネジメント論など。

著者紹介

連載「患者インサイト」患者の深層心理がわかれば医療現場が変わる

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

患者インサイトを探る 継続受診行動を導く医療マーケティング

杉本 ゆかり

千倉書房

「患者インサイト」とは、患者が心の奥底で考えている本音であり、医療に関する意思決定である。この患者インサイトを明らかにすることで、患者への情報提供や情報収集など、患者との効果的なコミュニケーション理解できるよう…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧