「簡単に受け止めることはできなかった」と話す長井紗良さん(仮名)

子宮頚管無力症により645gの超未熟児を出産した長井紗良さん(仮名)。障害を抱える娘を育てながらも小さく生んでしまった自分を責め続け、前向きになれない彼女を救ったのはとある医師の言葉でした。今回は、後悔や苦難とともに生きる決意をした彼女に話を聞きました。

長井さんの悩む姿と涙で救われた夫婦

交流会は様々な障害を抱える子の保護者が参加されていました。しかし、周りの親たちはみんな明るく元気に見えて、やっぱり来なければよかったと後悔したのだそう―――

 

「一人一人、自分の子どもについて話す時間がありました。私の番が来た時、最初は前向きな言葉を言わなきゃと、かなり取り繕って話しました。でも、話しているうちにだんだん無理するのがしんどくなってきて、最後には泣き出してしまったんですよね。結局暗い話ばかりしてしまいました」

 

交流会がお開きになった後、泣いてしまった自分に落ち込んでいる長井さんに、数組の夫婦が話しかけてきたそうです。

 

「『みんな前向きで明るいから引け目を感じていたけど、あなたの本音を聞けてよかった。同じように悩んでいる方がいて救われた』と言ってくれたんです。ああ、取り繕わなくても、ありのままでよかったんだとホッとしました。前向きになれないのは私だけじゃなかったと知ることができて私も救われました」

「育ててくれている、それだけで100点満点」

その後、参加を勧めてきた医師も長井さんの元へやってきたのだそう。

 

そして理香さんが泣いてしまったことを謝ろうとすると、

 

「長井さん、理香ちゃんを生んでくれてありがとう」

 

と医師から突然思いもよらない言葉が―――

 

「『僕たちは治療行為によって生存させてあげることしかできない。その後、人生を生きることができるかはその子と親に委ねるしかない。僕たちは何もできないんです』

 

『長井さん、前向きになれない自分を責めないでください。小さくても長井さんは娘さんを生んでくれて、今懸命に育ててくれている。それだけで100点満点です。理香ちゃんは幸せ者ですね』

 

主治医はそう言ってくれました。こんな私でも100点満点と言ってもらえて、気恥ずかしさや嬉しさで胸がいっぱいになりました」

 

自分を責めることしかできなかったその数年の中に、少し光が見えた気がしたと、長井さんは言います。

悩んでもいいけど自分を嫌うのはやめよう

「もちろん、今も毎日悩んでいます。あの時もっとこうすればという思いや、小さく生んでしまって申し訳ない気持ちはきっと一生消えないと思います。

 

でも、そんなクヨクヨしてしまう自分を嫌うのはやめました。悩みながらも日々を生きているありのままの私に100点満点をくれた、主治医の言葉を否定したくないですから」

 

そう話す長井さんは少し笑って、理香ちゃんの頭を撫でました。

 

横に座る理香ちゃんはとても幸せそうに微笑んでいました。
 

 

※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。

 

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