感染者激増の8月…福島県いわき市の病院が「コロナ病床」を爆速で用意できたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

全国で新型コロナウイルスの感染者が激増し、医療現場がひっ迫しています。東京都では国と都が、都内の医療機関に対して感染者の受け入れを要請する事態となりました。とはいえ病床の確保には時間がかかるため、患者の受け入れは容易ではありません。そんななか、同じく病床確保に迫られた福島県いわき市には、約2週間という早さでコロナ病床を設置・稼働させた病院があります。現場ではどのような取組みが行われたのでしょうか。

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急ピッチで「コロナ病床」の設置準備をスタート

8月は、福島県いわき市でも感染者数が激増しました。1日に100人以上がPCR検査で陽性と判明する日があり、自宅療養者が約200名にのぼることもありました。人口35万人の地域としては苦しい状況です。市内の病床も余裕のない状況で、筆者が勤務する磐城中央病院でも、新型コロナ専用病床を設置することになりました。

 

具体的な準備は8月3日からスタートしました。8月16日を本格的な稼働開始の目標日とし、院内の設備を確認しながら、1フロア44床の半分、20床あったエリアに17床の新型コロナ専用病床を設置することとしました。

 

「磐城中央病院に新型コロナ病床を…」という話題が出たのは8月に入るか入らないかという頃でした。話題が浮上してから2週間ほどでのスタートとなりました。

 

急な展開ではありましたが、スタッフから「できるわけがない」などといった声が上がることはなく、それぞれが「何とかやるしかない」と、前向きな姿勢だったように思います。ある医師からは、「スタッフのレベル的に心配だ、本当にやるのか?」という否定的な意見を受けましたが、ときわ会グループの新型コロナに特化したクリニック「小名浜中央クリニック」では陽性者の入院を受け入れてきた実績もあって、院内スタッフもどうしたら実現できるかを考えながら取り組み始めており、十分にできると確信していました。

 

負担は確かに大きいものでした。「もう1週間ほどスタートを遅らせても良いのではないか」という声もありましたが、保健所長から「1日でも早められないか」という連絡が入るほど切迫した状況でもあり、最低限必要な準備でスタートするほかありませんでした。

 

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本来「行政手続き」や「院内準備」は時間がかかるが…

行政関係の手続きについては、県の新型コロナ対策本部の方や保健所の方との関係ができていたことで、早急に進められたものと思います。手続きで時間がかかっていたら、必要な機能を必要なときに提供できません。

 

県のコロナ対策本部には、常磐病院を基幹型臨床研修病院にする際にもお世話になった方が関わっており、その方に連絡をしました。「情報が届き次第すぐに対応します」という確認を取ることができました。いわき市の保健所ともすぐに話を進めることができました。小名浜中央クリニックの立ち上げ、拡充からずっとやりとりを続けてきたことが功を奏しました。

 

院内の準備については、小名浜中央クリニックで新型コロナ対応を続けてきているスタッフに教えてもらいながら、設備、物品や人の動きなどのイメージを固めるところから進めました。もともと一緒に働いてきた仲間でもあり、わからないことはすぐに聞くことができました。

 

ただ、小名浜中央クリニックはもともと使われていなかった施設を利用している一方で、磐城中央病院では既存の機能を維持しなければならないという違いがありました。そこで、近隣で新型コロナ専用病床を設置している「かしま病院」に見学に行かせていただくことになりました。

 

まさに百聞は一見に如かずで、病棟を分けて新型コロナ専用病床を設置する際の押さえどころを具体的に把握することができました。CTを撮る際、他の患者さんの動線とどのように整理しているのか、陽性患者さんの出入りがあるときはどのように誘導をしているのかなど、実際の動きを見なければ準備が時間をかけなければ進まないということになっていたかもしれません。

 

準備期間を通して、かしま病院の事務長にはちょっとしたことを気軽に問い合わせることができました。理事長とは以前、「禁煙学会」の運営でお世話になった間柄です。大変ありがたいことでした。

物品調達や工事が間に合わない…「現場準備」に苦戦

イメージはできてきましたが、そこからの物品の購入や工事の手配には苦戦しました。特にお盆の時期と重なったことや、スタート目標日とベッドを空けるための患者さん移動との兼ね合いで、実際に現地で準備できる時間は限られました。

 

業者さんと話はつけられても、モノ自体の納期が間に合わないということが散見されました。たとえば、新型コロナ専用病床を設置するエリアでは空間的に独立させるための“壁”やビニールカーテンが必要となります。そういったものは突っ張り棒やビニールシートなどをホームセンターで調達し、自分たちで設置することで凌ぎましたが、コロナ専用病床以外に入っている患者さんが心配にならないようにと依頼した“壁”の設置には時間がかかりました。

 

ナースコールの手配も課題になりました。もともと病室だったところをナースステーションにする構成としましたが、ナースコールを受け取る機器が既存のナースステーションから動かせなかったのです。良さそうなサービスは見つかりましたが、やはり納期は、実際に陽性者の受け入れをスタートしてからとなってしまいました。

ハプニングに見舞われつつも、無事16日から本格稼働

ある程度患者さんを移動させる目処が立ち、設備、物品も最低限のものが揃い始めたか…といった頃、グループ内で、透析患者さんが陽性になるケースが発生しました。

 

小名浜中央クリニックでは透析を実施する体制を整え、透析患者さんで状態的に入院が必要な方が濃厚接触者になった場合などに受け入れてきていました。しかし、透析患者さんが陽性になった場合には、市内の病床の状況次第で、陽性者を優先して入院させなければならない可能性あります。

 

実際に透析患者さんから陽性者が発生したことを受け、小名浜中央クリニックに入院できる状態にするため、すでに入院していた濃厚接触者の透析患者さんを、前倒して13日から磐城中央病院で受け入れることとなりました。あれよあれよという間に、16日には本格的に陽性者の受け入れがスタートして今に至っています。

 

それまでの経験や他の事例があったことで、目標通りにスタートすることができました。この病院だからこそ準備しなければならない部分もあり、事前にすべての準備を見積もることは難しかったのですが、環境と相談しながら地道に作業を積み重ねるしかありません。現在も、看護師さんに教えてもらいながら、ガウンなどを着用してしっかりと防護した上で、新型コロナ専用病床を設置したエリアに入り整備を続けています。

 

 

杉山 宗志

ときわ会グループ

 

 

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ときわ会グループ 

地域の課題設定、解決に取り組むべく、現在は福島県浜通りにて活動中。医療・介護・教育を軸とした事業を展開するときわ会グループに勤務。東京大学工学部建築学科卒業、同大学院工学系研究科建築学専攻修士課程終了。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム修了。

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

連載医療従事者が本音で語る「日本社会」の現状~GGO For Doctor

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