日本でも確認された「ラムダ株」…ワクチンは有効?デルタ株より危険?【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

全国で新型コロナウイルスの感染者が急増するなか、ついにペルー由来とされる「ラムダ株」の感染が確認されました。感染力はどれだけ強いのか、ワクチンの効き目はどれくらいか。未だ情報が少ないラムダ株について、世界での研究報告を紹介します。

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次に猛威をふるうのは「ラムダ株」?増え続ける変異株

米疾病予防管理センター(CDC)は、「ウイルスは突然変異によって絶えず変化し、新しい株が、現れたり消えたり存続したりします。米国では、複数の株が出現しました。新たな新型コロナウイルスの株が増え、今では、2020年1月に患者が感染した、オリジナルの株はもはや存在しません」と述べます(※1)

 

たしかに、英国で見つかり主流であった「アルファ株」は減り、今では2020年10月にインドで報告された「デルタ株」が世界中で猛威を振っています。また2020年12月にペルーで検出された「ラムダ株」は、南米を中心に広がっています。

 

CNNによると、米国では2021年7月に、テキサス州ヒューストンのメソジスト病院で、最初のラムダ株の症例が報告されました(※2)。これまでに米国でラムダ株の症例1,060人が特定されています。

 

日本でも先日、初のラムダ株の感染者が確認されました。ギリシア文字の順で考えると、ラムダ株は次の流行になる?と疑問に思われるかもしれません。でも実際どうなのでしょう?

 

※1 https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/variants/understanding-variants.html

※2 https://edition.cnn.com/2021/08/07/health/lambda-coronavirus-variant-wellness-explainer/index.html

 

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CDCとWHOとでは「ラムダ株の認識」が異なる

CDCは、変異株をそれぞれ「懸念される変異株(VOC)」「注目すべき変異株(VOI)」「甚⼤な被害が想定される変異株(VOHC)」という3つの異なるカテゴリーに分類しています(※3)

 

VOCは「伝染性の増加、重篤な患者(例:入院数や死亡数)の増加、治療またはワクチンの有効性の低下などの証拠がある変異株」、VOIは「それらに影響を与える可能性のある変異株」、VOHCは「予防措置や医療対策の効果が、以前に流行していた株より著しく低下している証拠がある変異株」を意味します。

 

CDCは、アルファ、ベータ、デルタ、ガンマ株をVOCとして分類。ただし、ラムダ株は、VOCやVOIとはしておらず、同センターのウェブサイトでも症例は公表していません。なお、これまで米国ではVOHCは確認されていません。

 

一方、WHOは、変異株をVOCとVOIの2つに分類し、アルファ、ベータ、デルタ、ガンマ株はVOC、ラムダをVOIとしています(※4)

 

※3 https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/variants/variant-info.html

※4 https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/

ワクチンは有効?大流行する?研究者によって違う見解

これまでのところ、ラムダ株に対するワクチンの効果について、研究結果が分かれています。

 

東京大学医科学研究所の研究者らによる査読なしの報告によると、ラムダ株は、ワクチンに耐性がある可能性があります(※5)。一方、ニューヨーク大学の研究者らによる、別の査読なしの報告では、モデルナ社やファイザー社製ワクチンは、依然としてラムダ株に効くことが示唆されています(※6)

 

2021年8月18日のロサンゼルス・タイムズによると、今のところ専門家は、ラムダ株がデルタ株に代わって、米国で主流となることを示唆するデータはあまりないようです(※7)

 

ただし、WHOの疫学者マリア・バン・ケルコフ博士は「ラムダが『決して重要ではない』と言っているわけではありません。私たちは積極的に話し合い、利用可能なすべての情報源から、できるだけ多くの情報を収集しようと積極的に取り組んでいます」「ラムダ株のスパイクタンパク質には変異があり、アミノ酸が欠失し、懸念される特徴がありました。ウイルスに変化があれば、ワクチンの効果を阻害する可能性があります」と語ります。

 

スタンフォード大学臨床ウイルス学研究所所長ベンジャミン・ピンスキー博士は、「ラムダ株が注目される理由の1つは、L452Qという変異です。この変異は、デルタ株や、イプシロン株に見られるL452Rという変異と類似しています。ワクチンを接種した免疫系にL452R変異があると、ウイルスが体内の細胞に侵入するのを防ぐ抗体の効果が3倍も低下することがわかっています」「私たちは、このウイルスが変異して、既存のワクチンを回避する可能性に備える必要があります。ただし、最新のワクチン技術は、新型コロナウイルスの変化に迅速に対応できるので有望です」と語ります。

 

※5 https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.07.28.454085v1

※6 https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.07.02.450959v1

※7 https://www.latimes.com/california/story/2021-08-18/how-worried-should-we-be-about-the-lambda-variant-of-the-coronavirus

米国ではラムダ株は減少中、感染者の99%がデルタ株

CDCのデータによると、米国では2021年8月8日から8月14日の調査にて、約99%がデルタ株と確認されています(※8)

 

前述のロサンゼルス・タイムズによると、これまでにカリフォルニア州で検出された152件のラムダ感染者は、4月に88件。それ以降毎月の感染者数は減り、5月43人、6月8人、7月はわずか2人でした。

 

シアトルのフレッドハッチンソンがん研究センターの進化生物学者トレバー・ベッドフォード博士は、ニューヨークタイムズに「ラムダ株は、デルタ株ほど懸念されておらず、地球全体で支配的になるとは考えていません」「ブラジルで最初に確認されたガンマ株に比べ、ラムダ株は特定されてからしばらく経ちますが、アメリカではほとんど侵入していません。私はデルタ株に注目すべきだと思います」と述べます(※9)

 

※8 https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#variant-proportions

※9 https://www.nytimes.com/2021/07/08/health/lambda-variant-covid-peru.html

南米でもラムダ株は減少中だが…情報格差が招いた混乱

ペルーのカエタノ・エレディア大学の微生物学者で、ラムダ株の出現を記録したパブロ・ツカヤマ博士らの、査読なしの報告によると、ペルーでは、ラムダ株が、2021年1月、2月、3月、4月にそれぞれ20.5%、36.4%、79.2%、96.6%に拡大しました(※10)

 

Our World in dataのデータでは、ペルーでの変異株の情報は、2021年6月12日のラムダ株が81%、その後のデータはありません。ただし、感染者数は、4月(100万人あたりのCOVID症例数:4月13日 301人)をピークに減少(100万人あたりのCOVID症例数:8月19日 37人)しています(※11・12)

 

ツカヤマ博士は、ニューヨークタイムズに「ラテンアメリカには、ゲノムサーベイランスと新しい変異体の追跡検査を行う能力が限られています。そのため、情報の格差が生じ、ラムダ株に対する懸念が高まっています」「これまでに発生したどの株よりも悪くなるとは思いません。ただ、あまりにも情報が少ないため、多くの憶測が飛び交っているのです」といいます(※13)

 

日本でも、国民が混乱しないように、正確で透明性のある情報を伝えて欲しいと思います。

 

さて、ジョンズホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生学部アンナ・ダービン博士は、ニューズウィークに「適者生存(生存競争で環境に最も適したものだけが生き残って子孫を残しうること)です。複製されたウイルスは突然変異を起こします。最も高い力価で複製できるもの、あるいはよりよく感染するものが生き残ることになる。なぜなら、ある株はより簡単に広がり、他の株は消滅するからです」と語りました(※14)

 

今のところ、新型コロナウイルスは、ウイルスに都合よく変異し続けています。

 

※10 https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.06.26.21259487v1.full

※11 https://ourworldindata.org/coronavirus

※12 https://ourworldindata.org/covid-cases

※13 https://www.nytimes.com/2021/07/08/health/lambda-variant-covid-peru.html

※14 https://www.newsweek.com/origin-lambda-covid-variant-explained-1617480

 

 

 

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大西 睦子

内科医師、医学博士

星槎グループ医療・教育未来創生研究所 ボストン支部 研究員

 

 

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星槎グループ医療・教育未来創生研究所 ボストン支部 研究員 内科医師、医学博士

米国ボストン在住。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年から13年まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員。

【主な著書】
『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)
『「カロリーゼロ」はかえって太る!』(講談社+α新書)
『健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

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