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始まった裁判…怒鳴り散らす高齢入居者を懸命に諭す
裁判の期日、張田さんは法廷で声を荒らげます。
「絶対に出ません」
その言葉を皮切りに、今までの家主の無礼を延々と怒鳴り散らします。裁判官に促されて、別室で司法委員を交えて話をすることにしました。
建物の外観の写真からしても、明らかに老朽の域を超えているのは司法委員にも分かります。
「これ本当に古い建物だからさ、張田さんが頑張ってもどこかで取り壊さないとダメだと思うよ。裁判所が金額も調整するので、立ち退き料もらって退去するしかないんじゃないかな。息子さんはこの件をどう言っているの?」
張田さんは、この件のことを話し合えていないようです。毎月の収入もカツカツ。今の家賃以上は支払えないとのこと。同じ家賃を維持すると、今のところからはかなり不便な場所にならざるを得ません。そんな理由もあって、立ち退きを拒んでいたのでしょうか。
司法委員も懸命に説得を試みます。少しずつ張田さんの気持ちが、緩んでいっているように見えました。
法廷に戻り裁判官から、半年後、立ち退き料を支払うことで退去する和解が促されました。張田さんは「息子と相談してみます」と言い、法廷を後にしました。
その1ヵ月後、2回目の期日で張田さんはまた怒りが収まらない様子でしたが、最終的に裁判官に促され和解が成立となりました。こうなれば、何がなんでも半年で転居先を見つけなければなりません。
「大丈夫です! 自分で見つけられます! 放っておいてください」
こちらの思いを振り払うかのように、張田さんは強気でした。反面子どもたちも頼れず、途方に暮れる部分もあるのではないか、裁判所を出る後ろ姿を見ながらそう感じてしまったのです。
何とかお母さんのお部屋探しに協力してあげて欲しい、そう思った私は娘さんにもう一度手紙を書いてみました。半年という猶予があったとしても、残念ながら賃貸業界の繁忙期と重なっています。物件が内覧せずにすぐ契約されてしまう時期は、張田さんにとって逆風と思ったからです。前回同様、手書きで思いを伝えました。
そして今回も同じく、娘さんから連絡が来ることはありませんでした。