(※写真はイメージです/PIXTA)

従業員が在宅勤務することで、不動産経費が節約できるということだけでなく、生産性は13%向上、仕事に対する満足度が上がり、離職率低下につながったという。コロナ禍で進む在宅勤務はいいことだけなのだろうか…。※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

在宅勤務は1都市が消滅するほどのインパクト

そこで疑問が持ち上がる。「好きな場所で働いていい」と会社から言われたら、こうした技術系労働者のうち、どのくらいがベイエリアからの脱出を考えるだろうか。ベイエリアの技術系労働者4400人を対象に先ごろ実施された調査によれば、66%が脱出の意向を示した。これは、地元で働く技術系労働者83万人のうち、実に55万人に相当する。

 

だが、ここでは、もう少し控えめの数字を想定して議論を進めたい。たとえば、4分の1弱(20万人)がベイエリアを去り、もっと物価の安い市や郡に移り住むと仮定しよう。それでも、ユタ州ソルトレイクシティの全住民(訳註:日本で言えば、東京都台東区や島根県松江市とほぼ同等規模)が消えてしまうような数字だ。その経済的な影響たるや、いかばかりか。経済へのしわ寄せはこれだけにとどまらない。

 

2010年の調査によれば、ベイエリアの技術職が1人雇用されると、サービス業で5人の雇用が生まれるという。つまり、単に技術労働者の4分の1近くが消滅するだけでなく、この人々を当て込んでサービス業で仕事をしていた100万人以上の雇用まで、道連れになるのだ。

 

オフィスレス化社会あるいはオフィス大幅削減社会の長期的な影響が予期されるのは、サンフランシスコに限らないし、もっと一般化してアメリカ全体に限られる話でもない。パリやロンドン、シドニー、東京といった都市でも、同様の人口流出が進む見込みだ。

 

調査会社ハリス・ポールが、アメリカの成人2000人以上を対象に2020年4月に実施した調査によると、人口密度の高い地域からもっと田舎に移り住む意向が「どちらかといえばある」と「非常にある」との回答を合わせると、30%近くに上った。

 

 

ダグ・スティーブンス
小売コンサルタント

 

 

小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

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ダグ・スティーブンス

プレジデント社

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