テクニカルアプローチを活用するヘッジファンドは「投機的で非合理的な投資家」なのか? (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、「ファンダメンタルアプローチ=合理的で正当な投資」と言われることに対して、「テクニカルアプローチ」を活用するヘッジファンドは「非合理的で投機的な投資家」と言えるのかについて考えます。

「テクニカル分析」は「投機的」で敬遠されていたが…

オルタナティブ戦略の中心的役割を担うヘッジファンドには、多様な運用戦略がある。そして、数多くあるヘッジファンドのなかから有用な戦略を持つヘッジファンドを見極めるにあたっては、これまで世界中で投資・運用戦略のベースとなり、長い歴史を持つ「伝統的ファイナンス理論」の仕組みとその限界を踏まえた上で、その他の多様な投資・運用戦略をしっかりと理解することが重要である。

 

資産運用の理論的背景である現代証券投資理論(MPT)などの伝統的ファイナンス理論は、「効率的市場仮説」を概ねベースとしている。効率的市場仮説では、すべての金融情報は即座に市場全体に伝わり、完全に価格形成に反映されるとされている。

 

この効率的市場仮説は、証券価格に反映される「利用可能なすべての情報」をどのように考えるかによって、「①ウィーク・フォーム」「②セミストロング・フォーム」「③ストロング・フォーム」の3種類の効率性に分けられている。

 

過去の価格の動きやそのパターンから将来のトレンドなどを予想しようとする「テクニカル分析」においては、一番弱度の効率性といわれる「①ウィーク・フォーム」ですら否定されており、どちらかというと投機的取引、非合理的な投資(ノイズトレード)としてみなされ、機関投資家などのプロから敬遠されてきたという歴史があった。

 

とはいえ、近年では行動ファイナンス理論やアノマリー戦略の台頭に加え、AI・クオンツ運用の進化などにより、そもそも伝統的ファイナンス理論を支えてきた効率的市場仮説すら成立していない可能性も多く指摘され、テクニカルを含んだオルタナティブ戦略のモデル開発が進んだことで、多様な投資・運用戦略が群雄割拠する「戦略分散時代」に入ったといえよう(参照:『アクティブ運用の変化…「ファンダメンタルズ分析一択」から「戦略分散の時代」へ 』)。

「何らかのテクニカルアプローチ」をする主体は多い

多様なヘッジファンドに対して現地を含めてデューデリジェンス(調査)を行った投資家なら周知の事実であるが、ヘッジファンドマネージャーは、個人もしくはチームとして、または会社全体としてファンダメンタルアプローチをベースにしながら、何らかのテクニカルアプローチを取り入れて運用を行っているところは多い。

 

テクニカル分析や戦略という名称を使っていなくても、クオンツにおけるファクター戦略として、モメンタムやトレンドのテクニカルファクターを取り込んでいたり、投資家センチメントやフロー分析としてテクニカル要因を活用していたりする場合もある。

 

また行動ファイナンス・アノマリー戦略のなかにテクニカル戦略を取り入れている場合や、オルタナティブ戦略の大きな括(くく)りのなかにテクニカル戦略を取り入れている場合も多い。

 

とはいえ、ファンダメンタルバリューや確率・統計などを無視し、旧来のテクニカル分析やセンチメント分析だけを盲信し、短期的、投機的取引を専ら行う「砂上の楼閣理論」に代表される投資家とは一線を画した戦略をとっていることもまた事実である。

 

そもそも砂上の楼閣理論とは、株式の価値は砂上の楼閣のようなものだとみなす考え方であり、株式に対し投機的な取引を行う投資家とそれに基づき形成された株価などを揶揄した理論といえよう。砂上の楼閣とは、崩れやすい砂の上に楼閣(複数階ある立派な建築物)を作るが、結局、崩れてしまい長続きしないことを指す。

 

株式投資に当てはめれば、株価は本質的価値で決まるとは考えず、投資家心理で決まる傾向が強いとして投機的に売買する投資家が存在するということを伝えている。

 

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東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。

現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。

英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。

日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。

著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。

●オルタナティブ投資戦略(東海東京TV)
https://www.tokaitokyo.co.jp/tv/public/market/global.html

著者紹介

連載東海東京調査センター「オルタナティブ投資戦略取材レポート」

このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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