※画像はイメージです/PIXTA

「自分が死んだ後に家族が相続でもめないようにしたい」「相続税を少なくして家族にできるだけ多くの財産を残したい」などという思いから行われる相続対策。しかし中途半端な知識で行うと失敗することも珍しくはありません。今回取り上げるのは、7つの相続対策の失敗例。その相続対策の何がいけなかったのか、どうすれば失敗せずにすんだのか、見ていきます。

事例①:見よう見まねで書いた遺言書が無意味なものに

遺言書の失敗例としては、遺言書を書かなかったことで家族がもめることになったケースが多くみられます。仲の良かった家族でも、いざ相続という場面になるとトラブルに発展することがよくあります。

 

しかし、遺言書を書いたからといってうまくいくとも限りません。遺言書を書いたのに失敗したケースを紹介します。

 

【事例】

Aさんは、市販の書籍などを参考に遺言書(自筆証書遺言)を作成しました。数年後、Aさんが死亡して遺族が遺言書を確認したところ、次のような不備が見つかりました。

 

・作成日が「平成二十五年五月吉日」となっていた

・預金については銀行名しか書かれていなかった

・遺言書に書かれていない遺産があった

 

結局、Aさんの遺言書は無効となり、遺言書がない場合と同じように遺族どうしで遺産分割協議をすることになりました。

 

【事例①】では、Aさんの書いた自筆証書遺言の日付に不備があったため、遺言書が無効になってしまいました。遺言書の作成日付は年月日を正確に書かなければなりません。

 

自筆証書遺言は形式の誤りで無効になることが多く、次のようなものも遺言としては無効になります。

 

・署名・押印がない遺言書

・全文をパソコンで作成した遺言書

・音声データとして録音したもの

 

また、Aさんの遺言書では、預金について銀行名しか書かれておらず、支店、預金種別や口座番号がわかりませんでした。形式上は有効な遺言書であっても、遺産についての記載が次のようにあいまいな内容であれば、登記所や金融機関の手続きでトラブルが起こります。

 

・「田舎の土地を妻に相続させる」(所在地が書かれていない)

・「○○銀行の預金を長女に相続させる」(支店・預金種別・口座番号が書かれていない)

 

遺言書にはすべての遺産を漏らさず書かなければなりません。遺言書に書かれていない遺産があれば、その遺産をどのように分けるかを遺族どうしで話し合うことになり、遺言書を書いた意味がなくなってしまいます。

 

【遺言書の作成で失敗しないために】

・費用をかけてでも公正証書遺言を作成しましょう。

・自筆証書遺言を作成する場合でも専門家に相談するようにしましょう。

 

遺言書の作成で失敗しないためには、公証人に依頼して公正証書遺言を作成することをおすすめします。公証人への手数料が必要ですが、不備がない確実な遺言書が作成できます。

 

自筆証書遺言を作成する場合でも、専門家に相談するなどして形式や内容に細心の注意を払うようにしましょう。法務と税務の両面からアドバイスが受けられるとより安心です。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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