路線価に基づく相続財産の評価は不適切…東京地裁判決が相続税対策に及ぼす影響【税理士の解説】 ※画像はイメージです/PIXTA

相続税の計算では、市街地の土地の価額を路線価で評価します。しかし、東京地方裁判所は令和元年8月に、路線価による評価と実際の取引価格が大きく異なる場合には、路線価による評価を否定する判断をしました。そこで相続税で路線価による評価が否定されることになった背景と、相続税対策への影響について解説します。

相続税の財産評価で「路線価」が否定された

今回の判決のもとになった事案は、相続税申告における不動産の評価方法が争点となっています。相続税の申告にあたって相続人は土地の価額を路線価で評価したところ、国税当局が路線価を否定して追徴課税したことが発端です。

 

相続人は国税不服審判所に審査請求を行いましたが、棄却されたため東京地方裁判所に訴えました(図表1)

 

[図表1]今回の判決に関する事案の経緯

 

■被相続人はマンションを2棟購入

この事案における被相続人は、平成24年(2012年)に94歳で死亡しました。相続人は、妻、長女、長男、二男、孫養子(二男の子(長男))の5人です。二男の子は平成20年(2008年)8月に被相続人の養子になっています(図表2)

 

[図表2]相続人関係図

被相続人は、90歳を過ぎた平成21年(2009年)に、マンションを続けて2棟購入しました。購入価格は総額約14億円で、内訳は[図表3]のとおりです。

 

[図表3]被相続人が購入したマンションの購入価格

 

マンションの購入のために、被相続人は銀行から10億円あまり、妻から4,700万円を借りています。相続時には、これらの借入金が9億6,300万円残っていました。

 

これらのマンションは、遺言によりいずれも孫養子が相続しました。孫養子は、相続した川崎市のマンションを、平成25年(2013年)3月に5億1,500万円で売却しています。

 

■路線価による評価が否定されるまでの経緯

相続人は平成24年(2012年)10月に遺産分割を行い、翌平成25年(2013年)3月に相続税を申告しました。

 

申告では、マンション2棟を、国税庁の財産評価基本通達に基づいて、[図表4]のとおり3億円あまりで評価しました。なお、土地の価額は路線価により評価しています。

 

[図表4]申告時のマンション2棟の評価額

 

平成28年(2016年)4月、国税当局はこれらのマンションについて路線価による評価を否定し、更正処分を実施しました。更正処分では、[図表5]の不動産鑑定評価額をもとに相続税を計算し直しました。

 

[図表5]不動産鑑定評価額を基にしたマンション2棟の評価額

 

相続人は当初の申告で相続税額を0として申告していました。しかし、国税当局の更正処分でマンションの評価額が約4倍になったことなどから、本税及び加算税を含め3億3,000万円の追徴課税を受けることになりました。

 

相続人はこれを不服として国税不服審判所に審査請求を行いましたが、翌平成29年(2017年)に棄却されました。さらに、更正処分等の取り消しを求めて東京地方裁判所に訴えを起こしましたが、この訴えも棄却されました。

 

つまり、この事案では、路線価による評価が否定され、不動産鑑定評価額により土地の価額を評価することとされました。

 

相続人はこの判決を不服として控訴しています。

相続税を専門に取り扱う珍しい税理士事務所。年間1,500件(累計7,000件以上)を超える相続税申告実績は税理士業界でもトップクラスを誇り、中小企業オーナー、医師、地主、会社役員、資産家の顧客層を中心に、低価格で質の高い相続税申告サービスやオーダーメイドの生前対策提案等を行なっている。各種メディアやマスコミから取材実績多数有り(※写真は代表社員 荒巻善宏氏)。

税理士法人チェスター http://chester-tax.com

著者紹介

連載専門の税理士が解説~すぐに役立つ「相続税対策」実践講座

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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