「いい会社」ほど、事業承継時の株式移転コストは高い
次に、2点目は、好業績・好財務の優良企業であればあるほど、自社株の評価額が高騰しているという点です。
創業経営者のなかには、会社を起ち上げるときに資本金として出資した金額や、現在の資本金額でイメージなさっている方もいます。例えば、起業時に1000万円の出資でスタートした会社で、その後も増資をせずに資本金1000万円のままなら、なんとなく、自社株式の価値は1000万円、というイメージでとらえているということです。
しかし、現在の株式の評価額は、あくまで現在の会社の価値をベースとして計算されるものであり、出資金額はほとんど関係ありません。そして、長く続いてきて事業承継を迎える会社は、ほぼ例外なく企業価値が大きく向上しているため、株価も高騰しています。
基本的には、会社の価値が高くなればなるほど株価も高くなるので、経営者が必死で努力して事業を拡大して、会社を良くすれば良くするほど、株式の評価額も高くなります。つまり、1株ごとの財産権が大きくなり、ひいては、事業承継に際しての相続税・贈与税などの移転コストが高額になります。
逆に、放漫経営で万年赤字体質、倒産寸前のような企業はどうでしょうか? この場合、株式評価額は相対的に低くなり、株式移転に際しての障害は小さくなります。
端的にいえば、「いい会社になればなるほど、株価が高騰して株式移転コストが大きくなる一方、赤字会社や債務超過の会社ほど株価が低くなり、移転コストが小さくなる」ということです。
しかし、万年赤字体質、倒産寸前のような会社であれば、そもそも後継者に承継する価値があるのでしょうか? あるいは、後継者が承継したくなるのでしょうか? 疑問が生じます。
そんなわけで、多くの経営者は「じゃあ、どうすればいいんだ……」と悩んでしまうのです。
自社株評価が一時的に下がるタイミングでの移転がカギ
そこで、対策のポイントとなるのは、本来的な企業の価値や成長性は維持したまま、自社株の評価が一時的に下がるタイミングで株式を移転することです。
ただし注意しなければならないのは、タイミングを逸すると効果が得られませんし、それにより、事業に悪影響が生じるような対策をすることは本末転倒だということです。そのため、タイミングとバランスとに十分配慮して計画・実施されなければなりません。
また、自社株の移転コストが下がる方法は、必ずしも自社株評価対策だけではありません。暦年贈与、相続時精算課税など、以前からある課税の特例制度を適切に用いることが効果を発揮する場合もあるので、その点も解説しています。
さらに、相続税・贈与税をかけずに移転することができる「事業承継税制」も、条件や期限の制限はありますが、適用が受けられれば、非常に大きな効果を発揮します。
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