一番重い経済的負担を強いられている若い世代
■コロナが与える各世代への脅威
新型コロナウイルスがもたらしたパンデミックが厄介なのは、その影響が多面的に及ぶからだ。まず医学的に見た場合、脅威が長期にわたるうえに深刻で、その後を追うように経済崩壊の波も襲いかかる。高齢者や基礎疾患を抱えている人々に対する医学的な脅威はぞっとするものがあるが、若年者が完全に無縁でいられるわけではない。
一方、経済的脅威は特に若い人々や経済的弱者に重くのしかかるが、高齢者とて無関係ではない。要するに、どの世代であろうと、経済的な立場がどうであるかに関係なく、医学的な脅威か経済的な脅威に翻弄され、ひょっとしたら両方の脅威に直面することさえあるのだ。
◇ミレニアル世代
1981年から1996年の間に生まれたミレニアル世代は、パンデミックに突入するなかで、所得、富、資産のどれをとっても、自分たちよりも前のあらゆる世代の後塵を拝している。
たとえば、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が先ごろ実施した調査によれば、「(2000年代に成人を迎えた)ミレニアル世代の世帯の平均純資産は2016年に約9万2000ドルだったが、その上の世代であるX世代(ジェネレーションX、1960年代中盤~1970年代終盤生まれ)の世帯の2001年当時の平均純資産と比べて40%近く低く、またベビーブーム世代の世帯の1989年当時の平均純資産と比べて20%ほど低かった」。
さらに、こうした目減り分がミレニアル世代の財産に生涯にわたって影響を及ぼし、生計とライフスタイルの両面に響いてくるというのが、同レポートの見立てだ。
実際、経済の安定期や成長期に就職を迎える世代に比べると、景気後退期に就職する世代は、まず間違いなく所得と富の両面で不利益を被ることが、各種調査で明らかになっている。しかも、(とりわけ北アメリカ地域では)ミレニアル世代の多くが学生ローンを利用していて、この返済が重くのしかかり、新たな失われた世代を生み出す原因になっている。
いずれも厳然たる事実である。2008~2009年の金融危機から10年たって、ミレニアル世代は自分たちの所得がようやく前の世代に追いついたと感じ始めていた頃、今度は新型コロナウイルスに打ちのめされてしまった。
さらに、ピュー研究所が指摘するように、旅行・レジャーなど特に被害の大きかった業界の多くで、一時解雇の影響が突出していたのもミレニアル世代だった。元々、こうした業界は若い労働者を雇う傾向があるからだ。同じミレニアル世代でも年齢が高い層は、人生で支出のかさむ時期に突入していたところに経済的困難というダブルパンチで、この先、家計が上向く見通しが立たない状態だ。
◇Z世代(センテニアル世代)
1996年以降に生まれた世代は今、ミレニアル世代が10年前に経験したのと同じ道を歩んでいる。多額の学生ローンを抱え、住宅や保険といった費用の高騰に見舞われている。おまけに、この状況で雇用まで剥ぎ取られようとしている。データ・フォー・プログレスによる2020年の調査から次の事実が浮かび上がった。
回答者のうち45歳未満では、失業か自宅待機か時短勤務を余儀なくされている人が半数以上(52%)に達する一方、45歳以上の年代ではわずか26%にとどまっている。コロナウイルスの身体的負担は高齢者に最も重くのしかかっているのに対して、一番重い経済的負担を強いられているのが若い世代である。