(※写真はイメージです/PIXTA)

2020年だけでも、アメリカで2万5000店が閉鎖に追い込まれ、さらに大型ビル内に店舗が並ぶショッピングモールの25%から最大50%ほどが数年の間に営業を停止すると予測されているという。※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

北米小売りチェーンの3分の1が経営危機

コロナ禍を機に、新たに台頭する小売りの世界は、これまでとは似ても似つかない風景になる。辺りを見回せば、中小企業の残骸やら、傾いてしまった名門ブランドやら、弱体化した流通形態やら、資金繰りに苦しむ小売業者やショッピングモールのオーナーやらが否応なしに目に飛び込んでくる。

 

調査会社コアサイトリサーチによれば、2020年だけでも、アメリカで2万5000店が閉鎖に追い込まれ、エンクローズドモール(大型ビル内に店舗が並ぶショッピングモール)の25%から最大50%ほどが3~5年の間に営業を停止すると予測されている。アメリカなら、巨漢になりすぎた小売業界から売り場面積というぜい肉を多少落としたほうがいいかもしれないが、小売りが大打撃を被る国は他にもたくさんある。

 

イギリスも、2020年6月中旬には小売業の31社が経営破綻に追い込まれ、1600店以上が閉鎖されている。人口1人当たり売り場面積では、すでにアメリカの半分ほどになっているカナダでも、半世紀にわたって不景気や危機を乗り切ってきた靴・アクセサリーの「アルド(Aldo)」などのブランドが、新型コロナのしわ寄せで倒産している。

 

ドイツでは、新型コロナウイルスが債務超過の主因であると証明できることを条件に、破産申し立て義務を2021年3月まで停止する措置を打ち出している。ひとえに企業倒産の急増を回避するためだ。フランスやスペインも同様の措置を講じている。

 

2020年9月までに、北米小売りチェーンの3分の1が、破産宣言か債権者保護申請を余儀なくされた。

 

・センチュリー21百貨店
・スタインマート
・テイラード・ブランズ
・ロード・アンド・テイラー
・アシナ
・ペーパーストア
・RTWリテールウィンズ(ニューヨーク&カンパニーの親会社)
・MUJI U.S.A.(無印良品アメリカ法人)
・スー・ラ・テーブル
・ブルックス・ブラザーズ
・ジースター・ロウ
・ラッキーブランド
・GNC
・チューズデー・モーニング
・セントリック・ブランズ(ハドソン、ロバートグラハム、スイムズ、ザックポーゼン、カルバンクライン、トミーヒルフィガー、ケイト・スペードなどのブランドのオーナーまたはライセンサー)
・JCペニー
・ステージストアーズ
・アルド
・ニーマン・マーカス
・Jクルー
・ルーツUSA
・トゥルー・レリジョン
・モデルズスポーティンググッズ
・アートバンファニチャー
・ブルーステムブランズ(アップルシーズ、ブレア、ドレーパーズ・アンド・デイモンズ、フィンガーハット、ゲッティントン、ハバンド、オールドプエブロトレーダーズ)
・ピア1
・SFPフランチャイズ(パピルスの親会社) 
・セイル
・リートマンズ
・グループダイナマイト
・ル・シャトー

 

このパンデミック初期に犠牲になったブランドのリストを眺めていると、ある事実が浮かび上がる。新型コロナウイルスが、糖尿病や心臓病、喘息など基礎疾患のある人々の弱みにつけ込むかのように被害者を増やしたように、まったく同じ構図で小売業界に襲いかかったと言えるのだ。免疫力が低下していたり、元々健康に問題があったりした状態でパンデミックにさらされた企業には、生き残るチャンスはなかったのである。

 

負債が膨れ上がっていたJクルーやJCペニー、GNCといったブランドは、早い段階で息絶えてしまった。伝説の高級百貨店ニーマン・マーカスは、2020年5月に破産申請をしたが、最大の目的は50億ドル以上の債務の大半を圧縮するためだった。

 

他の企業も、斜陽化が進んだチャネルの犠牲になっただけである。ロード・アンド・テイラーのように、長年、迷走を続けてきた百貨店は、パンデミックの前に一気に撃沈してしまったのである。売り上げの大部分が百貨店頼りだったブランドも、あっけなく道連れとなった。落ち目のトゥルー・レリジョンやピア1、ラッキーブランドといったブランドも、重くのしかかる負担に耐えきれなかった。

 

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