(※写真はイメージです/PIXTA)

事業計画書は安定的な事業運営や事業規模の拡大をしていくためにも、作成しておくべきです。ビジネスプランや資金計画を事業計画書として明確にすることは、課題の早期発見などにつながります。さらに、「この人なら実現できそう」「説得力がある」と思わせるほどの熱がこもっている事業計画書があれば出資や融資の際にも有利にはたらくはずです。※本連載は、井口嘉則氏の著書『事業計画書の作り方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。

事業計画書の目次

事業計画書の目次例を見ておきましょう。

 

(1)既存事業用

既存事業では、中期経営計画という形で事業計画書がまとめられることが多いです。これは日本独特の慣習ですが、一般に株式公開企業には、中期経営計画の策定と公表が求められています。下記が中期経営計画の目次例です。筆者が中期経営計画策定指導をする場合に、以下のような目次でまとめてもらっています。

 

〈中期経営計画書の目次例〉

第〇次中期経営計画(目次)

1.序文(はじめに)

2.アプローチと前中期経営計画の振返り

3.当社の企業理念と通じる行い

4.SDGsに関連した当社の取り組み

5.10年後の将来像(長期ビジョン)

6.未来マップと新規事業候補

7.3年後のビジョンと経営目標(中期ビジョン)

8.外部事業環境分析(本社/A事業部/B事業部)

9.シナリオプラニング

10.自社経営資源分析

(1)財務分析

(2)競合との比較

(3)SWOT分析

(4)成功パターン

11.「構造改革」(パラダイムシフト)をどう進めるか?

12.ギャップと戦略(本社/A事業部/B事業部)

(1)ギャップと基本戦略(From→To)

(2)目標と方策のブレークダウン

(3)戦略マップとKPI

(4)事業戦略

(5)機能別戦略

(6)組織戦略

13.戦略課題まとめ

14.全社活動計画

15.全社計数計画(シナリオ別)

16.添付資料

(1)事業・機能系のテーマ別中期活動計画(本社/事業部別)

(2)ビジョン・ストーリー

 

目次のそれぞれの項目が、ビジョン・戦略立案フレームワークの個々の要素と対応しています。例えば、3.当社の企業理念と通じる行いは、V1の理念に対応し、また、10.自社経営資源分析は、S2の自社経営資源分析に対応しています(関連記事『コロナ禍の経営環境…最悪シナリオを凌ぐ「事業計画書」の戦略』)

 

中期経営計画は、かつては経営目標と計数計画という数字の計画が中心でしたが、それだけでは会社が目指す姿や目標に至る戦略が不明瞭となることから、近年では、経営ビジョンやビジネス戦略の提示が求められるようになっています。さらに、そうした戦略をどのように実行するのかという観点から、活動計画の立案も求められるようになっています。

 

また、経営目標ということでいうと、従来は売上高や営業利益率等の損益計算書系の指標が中心でしたが、資本効率という観点から、ROAやROEの目標も求められるようになっています。

新規事業計画書の書き方のコツとは

(2)新規事業用

新規事業の場合は、新規事業の事業計画書またはビジネスプランと呼ばれます。新規事業は、なぜその新規事業を行う必要があるのかという背景と目的や、既存事業が保有する生かせる経営資源や既存事業への波及効果、投資回収見通しなど、組織内でゴーサインをもらうために必要な要素も加わってきます。

 

また、元手を外部の投資家や公的補助金・助成金に求める場合には、責任者(提案者)のプロフィールや知識や経験を明らかにし、その新規事業を立ち上げることができ、かつ成功させられる人材であるかどうか、借りたお金または出資してもらうお金を返したり、出資してもらう以上のリターンを返せる見通しを示す必要もあります。

 

下記が新規事業の目次例となります。

 

Ⅰ.はじめに

1.提案者プロフィール

2.提案の背景

3.事業の概要(含む事業コンセプト)

Ⅱ.事業計画概要

1.ビジネスモデル

2.事業理念と事業ビジョン

3.顧客及び顧客ニーズと市場規模

4.取扱商品・サービスと営業エリア

5.ビジョン・ストーリー-感動の場面

6.ペルソナと購入プロセス

7.競合と当該事業の重要成功要因

8.業務プロセス

9.マーケティングプラン (商品・価格・チャネル・広告宣伝)

Ⅲ.当社が取り組むべき必然性(社内新規事業提案の場合)

1.企業理念・経営ビジョンとの整合性

2.活かせる経営資源とその優位性

3.当社グループの成長にもたらされるもの

Ⅳ.事業化方法とステップ

Ⅴ.事業収支計画とファイナンスプラン

Ⅵ.事業責任者と経営体制

Ⅶ.本提案に伴うリスクと対応策

Ⅷ.今後の検討課題

 

新規事業の事業計画書が既存事業の事業計画書と異なる特徴は、基本的に一つの事業について述べるため、基本戦略と事業戦略のように階層構造になっていません。また、事業戦略の中身を具体化するために、ターゲット顧客や市場規模を推定したり、マーケティングプランを明らかにしたりすることが求められます。

 

そして、ゼロからスタートすることが多いため、数ヵ年にわたる収支計画を立て、いつ頃黒字化できるのか、また先行投資した分が回収できる見込みがあるのかどうか、トータルでどれ程の資金が必要なのか等計数計画を詳しく作り込み示す必要があります。

 

さらに、新規であるがゆえに、どこがどう新しいのか、どんなものを作るのか、どんなサービスを提供するのかもあわせて具体的に示す必要があります。

 

 

井口 嘉則
株式会社ユニバーサル・ワイ・ネット 代表取締役
オフィス井口 代表

 

 

事業計画書の作り方100の法則

事業計画書の作り方100の法則

井口 嘉則

日本能率協会マネジメントセンター

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