有効な書き方なのに「相続手続きができない」遺言書
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【遺言書】※
遺言者は、遺言者の有する不動産、預貯金、有価証券等一切の財産のうち、3分の2を、遺言者の長男甲野一郎に相続させ、3分の1を、遺言者の二男甲野次郎に相続させる。
XXXX年X月X日 甲野太郎 印
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※ 書き方としては認められているものなので「有効」と言えますが、この遺言書のみでは実際の相続手続きができず、遺産分割協議が必要になってしまいます。
【本記事のポイント】
●包括遺贈の場合、原則として遺産分割協議を必要とする
●記載の簡単さや形式面のみに着目せず、手続き時点の流れもきちんと想定する
「長男へ多めにのこしたい」割合以外で指定するには
太郎さんには2人の息子がいます。現在、太郎さんは長男一家と同居中で、二男は少し離れた地域で暮らしていることもあり、年に数回顔を見せる程度です。
ある日、太郎さんは相続での取り分は兄弟間で平等であることを知り、別の日に二男が、「今の法律では長男も二男も相続での取り分は同じ」と言っていたことも気になって、世話になっている長男に財産を多めにのこすため遺言書を作成しました。
遺言書で、渡す財産を指定するには2つの方法があります。
1つは「3分の1」「3分の2」など、財産を割合で指定する方法。このような書き方を「包括遺贈」と言います。もう1つは、財産を特定し、それぞれについて渡す相手を指定する書き方で、これを「特定遺贈」と言います[図表]。
「特定遺贈」の遺言書の書き方事例
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【遺言書】
遺言者は、遺言者の有する次の財産を、遺言者の長男甲野一郎に相続させる。
一、土地
愛知県東海市XXX1丁目1番
宅地 150.00㎡
二、建物
愛知県東海市XXX1丁目1番地
家屋番号 1番
木造瓦葺2階建 居宅
床面積 1階100.00㎡
2階 80.00㎡
三、ABC銀行 東海支店の預金すべて(口座番号1234567の普通預金、口座番号1111111の定期預金等)
(以下省略)
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