(※写真はイメージです/PIXTA)

妻に先立たれた後、ある女性と20年以上、夫婦同然の生活をしていた丙野春夫さん。財産を、前妻との間の2人の子供へ相続、内縁の妻へ遺贈する遺言書を作成しましたが、そこには重大な漏れがありました。遺言書を作成する際の注意点を、行政書士の山田和美氏が解説します。※本連載は、書籍『「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

相続人ではない「内縁の妻」への遺贈を含む遺言書

* * * * *

【遺言書】

 

遺言者、丙野春夫は、次のとおり遺言する。

 

1、私のA銀行岐阜支店口座番号0123456の普通預金のうち、金800万円は、乙野夏子(岐阜県XXX市XXX二丁目二番地コーポ岐阜101号室)に遺贈する。

 

2、前条に記載の普通預金のうち、金400万円は、私の長女甲野秋子に相続させる。

 

3、第一条に記載の普通預金のうち、上記に記載のない部分は、私の二女、丙川冬美に相続させる。

 

4、前条までに記載のない財産はすべて、前記 乙野夏子に遺贈する。

 

XXXX年XX月XX日

 

岐阜県XXX市XXX2丁目2番地コーポ岐阜101号室 丙野春夫(印)

* * * * *

 

※ 1~4、すべて、この内容を実現する責任者がよくわかりません。特に1と4は相続人ではない者への遺贈なので、注意が必要です。

 

【本記事のポイント】

●内縁の妻など、相続人ではない人への遺贈には特に配慮が必要。公正証書で作成し、信頼できる遺言執行者も選任しておく

●遺言執行者の指定とともに「権限の記載」も入れておくと安心

足の調子が悪い内縁の妻のため、自筆証書遺言を作成

丙野春夫さんは妻に早くに先立たれた後、ある女性と20年以上、夫婦同然の生活をしています。今さら籍を入れる必要もないと考え、内縁関係です。

 

春夫さんには2人の娘がいますが、彼女たちが成人し家を出た後で春夫さんと同居を始めた内縁の妻と娘たちとは親子という感覚もなく、面識もほぼありません。

 

内縁の妻は数年前から足の調子が悪く、ほぼ自宅から出られない状態なので、春夫さんは、自分の亡き後、彼女が生活に困ることのないよう、インターネットで調べて前ページのような自筆証書遺言を作成しました。

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残念な実例が教えてくれる 「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方

残念な実例が教えてくれる 「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方

山田 和美

日本実業出版社

昨今の終活ブーム、エンディングノートブームの影響で、 ・そもそも法律要件を満たしていないので効力がない ・遺族がもめやすい検討事項がまったく解決されていない ・相続税は抑制されたようだけど、これでは家族の溝を深…

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