未経験の若手スタッフを「園長先生」に…デキる人材はこう育つ (※写真はイメージです/PIXTA)

「あのスタッフは使えない」「いい人材がいない」…職場でそんな会話を聞いたことはないでしょうか。筆者は、福島県内で展開する医療グループ「ときわ会グループ」に勤務する医療従事者の一人ですが、医療の現場においても同様の会話を聞くことがあると語ります。しかし筆者のグループでは、若手スタッフに重要な役割が任せられる事例も珍しくありません。経験のない若手が活躍・成長できる環境とは、どのようなものでしょうか。

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人は「役割」ができて初めて活躍する

筆者が勤務するときわ会グループでも、職域接種をはじめとして、新型コロナワクチンの接種を積極的に進めています。筆者が事務長を勤める磐城中央病院では、企業健診を実施していることもあり、職域接種に関する相談のほか、行政からの相談も受けています。医師や看護師はもちろん、現場のロジ(後方支援)を担う事務スタッフにも、経験が蓄積されてきています。

 

磐城中央病院でのワクチン接種では、若手の女性事務スタッフが活躍しています。

 

はじめのうちは、ワクチン接種の会場に筆者が毎回行けるわけではないと思い、フォローをお願いしようと思っていました。その若手スタッフは職域接種を何回か経験し、先日は福島県広野町での集団接種に参加しました。

 

彼女には、はじめのうちから「何か手伝うことはないですか?」と積極的な姿勢で取り組んでいましたが、今となっては、必要物品を配置したりワクチン充填の補助を行ったりするなど、次から次に自然と手が動くようになっていて驚きます。医師や看護師などの資格がなければできない部分を除き、どこにでもフォローに入れるようになっています。筆者が現場にいるよりも、圧倒的に頼れる存在になっています。

 

彼女は、医師の送迎にも対応しています。医師の送迎に使う車両は、いわゆる高級車です。もともと運転は苦手ではなかったようですが、はじめはやはり怖かったとのことでした。今はすっかり任せられるようになっています。

 

彼女の動きを見ていると、人は自分の役割ができると活躍しはじめるのだということをつくづく感じます。

 

今後、新しくワクチン接種の依頼などが入ったとしても、他のスタッフと調整しながら形にできるようになってきているでしょう。今回の経験が彼女の成長に繋がっていれば、筆者としても嬉しい限りです。

 

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経験のない若手スタッフが「園長先生」に就任

ときわ会では、若手が肝となる役割を担う事例が多くあります。

 

たとえば、ときわ会グループ子育て部門の「かなや幼稚園」の園長を務めていた竹本恭太さんです。竹本さんが園長になったのは30歳になる年で、未経験からのスタートでした。彼は当時、園のスタッフの中でも2番目の若さでした。

 

「自分に務まるのだろうかという不安もあったけれど、それまでの取り組み方を評価してもらえていたことは嬉しかった。想定より早くチャンスが回ってきたと思った」と語ります。

 

幼稚園の園長というと50、60歳代がほとんどであり、市内の園長の会合などに行ってもやはり竹本さんが一番若く、同世代がいたとしても、家族経営の園の親族や副園長ということばかりだったようです。

 

園長になり、はじめのうちは現場の先生方に仕事をお願いするにしても意図した通りに伝わらないなど、コミュニケーションの取り方に悩んだと言います。

 

周囲のスタッフが歳上というだけでなく、幼稚園の先生としての経験もない中でマネジメントをしなければならないのです。元々の文化を変えなければならない場面もあったでしょうし、信頼を獲得していくには相当の苦労があったと思います。

 

本人は「学び続けなければならなかった。新任の先生かというくらいに、現場の先生方に教えていただいたり、研修に行ったりした」と話します。管理者は一歩引いて現場のケアをするというイメージを持っていたとのことですが、それをしようにも自身が知見を持っていなければどうにもならず、制度、安全管理、組織運営といったものから、保護者との接し方、文書の作り方といったことまで勉強せざるを得なかったのでした。

 

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リーダーの役割は「スタッフを活躍・成長させること」

竹本さんとはこのところ同じ部屋にデスクを並べ、外部に訪問する際も連れ立つなど一緒に仕事をする機会が多かったため、スタッフとのコミュニケーションの仕方を垣間見ることができました。フランクで、締めるところは締め、スタッフの話をしっかりと聞く、間違っていたら素直に謝る。当たり前にも思えることですが、こういったことが自然とできるからこそ周囲のスタッフに信頼されているのだと感じますし、仕事を進めるうえでは信頼されることが不可欠だったからこそ身に付いた姿勢なのでしょう。

 

そして、上から目線の話し方をしません。「長」がつくからといって偉いのではなく、役割としてその仕事をしているだけ、と飲みながら教えてくださったこともありました。

 

竹本さんが園長を務めたのは3年間ですが、この間に、台風19号の被害、新型コロナウイルスの蔓延など、イレギュラーな出来事がありました。こういったこと一つ一つに対応せざるを得ない立場に身を置いたことが、本人にとっても貴重な経験となったようです。

 

2022年、福島県富岡町に「共生型サポート拠点施設」が立ち上がります。ときわ会はこの施設の指定管理者として、特別養護老人ホームや地域の方々の交流拠点の運営を担うことになりますが、立ち上げの中心となっているのが竹本さんです。介護施設での勤務経験はありません。それにも関わらず、こういったプロジェクトを任されて奮闘しています。筆者も一部関わらせていただいており、一緒に仕事ができることを嬉しく感じていますし、これまで竹本さんが培ってきた経験を少しでも学ばせていただければと思っています。

 

「あのスタッフはダメだ」「いい人材がいない」という話を聞くこともありますが、それはスタッフ本人が活躍できる役割をうまくお願いできていない場合や、その経験を通して本人の能力を育てられていない場合もあるのではないでしょうか。

 

「『長』がつく役割を担うようになったら、次に同じ役割を担う人を準備するのが仕事だ」と、土屋了介先生(公益財団法人ときわ会顧問〔元地方独法神奈川県立病院機構理事長〕)に教えていただきました。若手スタッフが活躍し、成長に繋がるような仕事のお願いの仕方ができるよう、筆者自身も学び続けなければならないと思っています。

 

 

杉山 宗志

ときわ会グループ

 

 

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ときわ会グループ 

静岡県伊豆出身。静岡県立韮山高等学校、東京大学工学部建築学科卒業、同大学院工学系研究科建築学専攻修士課程終了。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム修了。東京大学在学中は運動会剣道部に所属。現在は福島県いわき市を中心に医療、介護、教育を軸に事業展開する『ときわ会』にて勤務。

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

連載医療従事者が本音で語る「日本社会」の現状~GGO For Doctor

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