(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、ヘッジファンドの「CTA戦略」に分散投資するポイントを見ていきます。

複数のCTA戦略に分散投資する「戦略分散」アイデア

CTAに分類されるヘッジファンド内でも多様な投資戦略が存在する。ここでは、CTA内での戦略分散のアイデアを見ていきたい(参照:『ヘッジファンドも使う「戦略分散」で市場の急変に対応する方法』)。

 

多くのCTA戦略は、モメンタムを含むトレンド追随型(特に移動平均線や出来高およびそれに類似するテクニカルモデル)を取り入れているものが多い。

 

そして、CTA戦略内で分散投資を行う場合は、リスク・リターンや相関および歪度、尖度などのプロファイルが異なるもので、分散型のCTA戦略のポジションが伝統的な株式や債券のロング資産を含む全体のポートフォリオに与える影響をいかにポジティブにしうるCTA戦略を選択できるかが重要になってこよう。

 

●トレンド逆張り型に加え、モメンタム・トレンドフォロー系でも日次、週次、月次、短いイントラデイの日計り取引型などの多様な時間軸モデルを活用するCTA戦略を選択する。

 

●ある程度の期間を伴った急落型であるITバブル崩壊やリーマンショックなどとは異なる値動き(たとえば一瞬の急落と急騰をもたらすフラッシュクラッシュとその反動に対する対応)に加え、一瞬で急落するものの反発が小幅なデッド・キャット・バウンス型や一瞬の急落後もそのまま反発の動きが起こらないフラッシュクラッシュへの対応がある程度可能なCTA戦略に分散投資する。

 

●テクニカルデータだけでなく、一部ファンダメンタルズデータも考慮したCTA戦略モデル、たとえば、キャリー・リターン(市場の状態に変化がないという前提の下で一定期間内にその投資対象からどのくらいのリターンが得られるか)を追求するバリュー型モデルや短期の価格トレンドや平均回帰の動きからの収益獲得を狙うレラティブバリューミックス型のモデルを持つCTA戦略を組み込む。

 

●パターン分析、エージェントモデル、オルタナティブデータなどを活用し、行動ファイナンスやESG投資戦略のなかでも学術的なトレンド・モメンタムとリバーサル発生メカニズム(その修正含む)を活用した新たなテーマ・アノマリー型CTA戦略モデルなどに投資する。

 

●株式、通貨、商品、その他のオルタナティブ資産への投資配分において、相対的に強いトレンドが発生していると見込まれる資産に対して積極的・機動的にアセット・アロケーションを行うCTA戦略を活用する。

 

●完全機械型CTA戦略モデルだけでなく、人によるジャッジメンタルな裁量型CTA戦略を組み込む。

 

●同じタイミングで売買発注にならないCTA戦略(たとえば、一部のテクニカル戦略を活用することで売買サインが概ね一致することや最大ドローダウンなどによるロスカットのリスク管理基準が概ね一致することを回避する)や市場へのマーケットインパクトが小さく、継続的に執行コストの低いCTA戦略に投資する。

 

■まとめ

以上、ヘッジファンドの代表的な戦略の一つであるCTA戦略に分散して投資する際のアイデアについてお伝えした。とはいえ、あまりにも多様なCTA戦略に分散しすぎても、ファンド管理の煩雑さや分散投資の逓減効果(リスクの低減効果が低下)も予想される。

 

そのため、最終的には、自分が求めるリスク・リターンに加え、今後の相場見通しと回避したいタイプのリスク、およびそのCTAが活用する投資戦略の納得性や相性などを基に、最大でも5~10ファンド程度までに絞り込むことも重要だと考える。

 

中村 貴司

東海東京調査センター

投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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