(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、ヘッジファンドの「CTA戦略」に分散投資するポイントを見ていきます。

CTAは様々な金融商品に投資する「商品投資顧問業者」

CTAは「Commodity Trading Advisor」の頭文字をとったもので、「商品投資顧問業者」のことを指す。商品先物だけでなく、通貨や株価指数先物など幅広い金融商品に分散投資し運用を行う。また、確率・統計、金融工学、データサイエンスをベースに、多様な金融商品のトレンドを分析・解析している。

 

「CTA」はヘッジファンドの戦略の一つで、そのなかの代表的なものに、相場が上下に振れるなかでもトレンドを見極めて収益を狙う「トレンドフォロー(追随)型」がある。

 

しかし最近では、先物の売買等を通じて日本株へのCTAの影響度も強まっており、どのようなポイントでCTA戦略を通じたファンドフローが生じやすいかを掴んで投資判断に活かすかが、α(投資パフォーマンス)獲得のためのアノマリー(経験則)戦略の一つになってきている。

「スタイル分析」で各リスクファクターの感応度を推定

CTA戦略のスタイル分析(ファクターリターン)では、テクニカル指標の説明力が高いことが広く知られている。ちなみにスタイル分析とは、ファンドのリターンから各リスクファクターの感応度を推定することで運用スタイルを掴む手法。これにより、ヘッジファンドがどのようなリスクをとっているのかを概ね把握できる。

 

参考までに、CTA戦略のスタイル分析の実務においては、たとえば200日線の傾きや一定期間の200日線を挟んだ価格の位置取りを基にした戦略、または短期の移動平均線が長期の移動平均線を交差する戦略によりポジションを構築してそのリターンをファクターとした場合、説明力が非常に高いCTA戦略もある。

適した「CTA戦略」を選ぶためにスタイル分析を活用

CTA戦略を選別するにあたっては、スタイル分析によって、たとえばどのようなテクニカル投資戦略を活用しているかを推定し、それに基づくモデルでいくつかのストレステストを実施(金融危機時と類似する価格経路による歪度、尖度などの生成も含む)し、資産・戦略分散として株式や他のヘッジファンド戦略との組み合わせの相性などを推し量ることも重要であろう。

 

たとえば、Sebastian EbertとChristian Hilpertが2014年に公表した「The Trend is Your (Imaginary) Friend - A Behavioral Perspective on Technical Analysis」のなかで、短期の移動平均線が長期の移動平均線を交差するテクニカル(ゴールデンクロスやデッドクロス)手法を活用した投資戦略は、ダウンサイドリスクの抑制型の分布を生み出す可能性があることを実証分析として提示している。

 

このような分析は、ある程度の上昇トレンドに追随しうる下方リスク抑制型のポートフォリオ構築において活用されることが多い「①ポートフォリオ・インシュランス」や、「②リスクパリティ戦略(リスク量に応じて投資配分を調整する)」、「③(行動ファイナンスによる)低ボラティリティ・ファクター戦略」などとともに、「④テクニカル投資戦略」においてもプラスの歪度の分布を生成できる可能性があり、ポートフォリオのなかにCTA戦略などを組み込む理論的な一つの根拠になっている。

 

また、投資対象の組み合わせのなかでリスクが最も低くなると期待される「最小分散ポートフォリオ」は時価総額加重インデックスよりリスクが小さく、リターンは同程度か高いという結果がある。

 

その一方、最小分散ポートフォリオは多くの実証分析では他の戦略と比較し、上昇局面での追随率が低い点などが報告されている。そのため、年金運用においても純粋な伝統的資産のロング内での戦略対応だけでなく、オルタナティブ・ヘッジファンド投資としてCTA戦略をポートフォリオに組み込む動きが広がってきている。

 

加えて、伝統的な株式などのインデックスとの統計比較において、たとえば過去の平均リターン、最大ドローダウン、ボラティリティ、下方リスク、修正VaR、シャープレシオ、ソルティノレシオなどの各項目をみても、CTA戦略が良好な結果を示すことが多い。

 

このようなことも、伝統的な株式などのインデックス投資にCTA戦略を組み合わせて、リスクを低減させながらリターンの改善を図るポートフォリオ戦略を後押ししていると言える。

 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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