マーケットの「異常検知」を捉えて「ヘッジファンド投資」のリスクを管理する方法 (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、マーケットが平時から有事に変わる「異常検知」を捉えて、ヘッジファンドへの投資リスクを管理する方法について見ていきます。

ヘッジファンドのリスク計測には、複数の指標を使う

ヘッジファンドのリスクの計測については、実務上は正規分布を前提とした標準偏差だけでなく、下方偏差に加え、「VaR(バリューアットリスク)」「ES(期待ショートフォール)」「歪度」「尖度」などを基にして複合的に判断することが多い。

 

たとえば、「VaR(Value-at-risk)」は、ある特定の信頼水準における最大損失額を表すが、欠点として、損失がVaRよりも大きくなった場合にその損失額がどの程度巨額なものになりうるのかがわからない点がある。

 

そこで、この欠点をカバーする指標として、損失がVaRを超える条件のもとでの期待損失額を表す「ES(Expected Shortfall)」がある(参照:『VaR、ES、尖度…計測指標を活用して「ヘッジファンド投資」のリスクを管理する方法』)。

 

なお、VaRやESはテールリスク(極めて低い確率で株価が大幅に下落するリスクのこと)を捉えようとする一つのリスク管理指標であり、その計算には、「分散共分散法」「モンテカルロ法」「ヒストリカル法」がよく使われる。それぞれ解説する。

 

◆分散共分散法

分散共分散法は、リスクファクターが正規分布にしたがって変動し、リスクファクターに対する資産・負債の現在価値の感応度が一定であると仮定してVaRを算出する方法であり、「デルタ法」とも呼ばれる。

 

正規分布を前提にしているため、ポートフォリオ理論との親和性があり、かつVaRの計算が比較的容易である一方、リスクファクターの変動が必ずしも正規分布に従うとは限らず、非線形の分析対象に上手く対応できない点には留意が必要である。

 

◆モンテカルロ法

モンテカルロ法は、将来のリターン分布に何らかのパラメトリックな分布(正規分布に限らない)を想定し、その分布に従う疑似乱数または準乱数を発生させ、将来のリターンのシナリオを多数作成し、VaRを算出する方法である。

 

リスクファクターの確率分布について、正規分布以外も想定が可能(非線形に対応)だが、乱数を発生させることで大量のデータが生成され、計算負荷が重くなるという欠点がある。ただし、近年ではコンピュータで処理できる能力が各段に高まったことで、このような欠点は解消されつつある。

 

◆ヒストリカル法

ヒストリカル法は、過去のリスクファクターから理論価値をさかのぼって算出し、信頼水準に相当するパーセンタイル値からVaRを算出する方法である。過去のデータ変動に基づく分布、たとえば非線形リスクにも対応することができる反面、過去に生じた分布しか扱えない。また、データ数とデータ計測期間をどのように取るかで計測結果が不安定化しやすいという欠点がある。

 

ファットテールなど非線形リスクのある実際の金融市場や非線形をみせるヘッジファンド分析などにおいては、モンテカルロ法やヒストリカル法の活用がより望ましいといえる。

 

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東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。

現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。

英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。

日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。

著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。

●オルタナティブ投資戦略(東海東京TV)
https://www.tokaitokyo.co.jp/tv/public/market/global.html

著者紹介

連載東海東京調査センター「オルタナティブ投資戦略取材レポート」

このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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