ビジネスリーダーがはまる短期利益至上主義のワナ
ビジネスリーダーがアフターコロナで今後の戦略づくりの際にはまりやすい落とし穴を見ておこう。
■短期利益至上主義
将来を思い描こうとして見誤る最初の原因は、短期利益至上主義にとらわれてしまうからだ。一見重要そうな数々の問題に注力するのだが、蓋を開けてみると、こうした問題は長期的には瑣末なものだったり、経営へのインパクトに欠けるものだったりすることが多い。新型コロナウイルス感染拡大に関して頻繁に持ち上がる疑問をいくつか挙げてみよう。
●流行収束後も、消費者のウイルスや細菌に敏感な姿勢は変わらないだろうか。
その可能性は極めて高い。言い換えれば、小売業者にとっては、少なくとも短期的には新たなスタンダードや手順が必要になる(ただし、長期的にベストプラクティスになると考えられる)。
●景気低迷と失業に直面し、消費者は倹約志向になるのか。
そのとおり。少なくとも当面そうなるのが普通だ。また、小売業者独自の強みも多少の調整が必要になるはずだ。
●アパレルや再販・レンタルといった新しい分野は短期的に厳しいだろうか。
アパレル販売は総じて影響を受けている一方、再販(リセール)事業は意外にしっかりと持ちこたえている。多くのリセールショップがすでにオンライン販売サイトを定着させていて、実店舗が閉まっても消費者を受け入れる体制が整っていた点が大きい。
また、リセールの宝探し感覚を一種の娯楽として、自宅にいながらにして楽しめる点を指摘する声もある。もちろん、経済的な先行き不透明感から安価なリセール品人気が高まったと見る向きもある。いずれにせよ、消費者が実店舗での買い物に安心感を取り戻し、リモートワークのトレンドも大きく変わらないことには、アパレル販売がパンデミック前の水準に完全に回復することは難しいだろう。
●消費者は店舗に足を運ぶ回数を減らし、オンライン購入を増やすだろうか。
これはすでに現実の動きとなっていて、今後も続くことは確実なようだ。マッキンゼー・アンド・カンパニーが、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、インド、日本、韓国、中国で20の製品カテゴリーを対象に実施した調査によれば、ほぼすべての国と全カテゴリーで、感染拡大収束後もオンラインショッピングの支出が増加する見通しである。
唯一、例外的な結果が見られたのが中国だ。20の製品カテゴリーのうち、10のカテゴリーでマイナスの結果となった。つまり、特定カテゴリーのショッピングに関してはオンラインを利用する意向が小さいことがわかる。
思うに、他にも理由はあるかもしれないが、中国ではウイルスによる危機が初めてではないことも関係しているのだろう。2003年のSARS流行中、中国はオンライン取引のめざましい成長につながる大転換があった。他の国々では、まさに同様の大転換をこれから経験することになるのだ。