(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナの危機を評価するときに難しいのは、脅威とその規模をどう見極めるかだという。今回のパンデミックを量的に捉えることが難しいのは、その危険性を判断するとき2つの異なる尺度が存在する。1つは健康上の脅威、2つは経済的脅威だという。今回のパンデミックをどう評価すればいいのか。※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

経済の正常化に数年かかるという予測

■「健康」と「経済」への脅威。双頭のモンスターだった新型コロナ

 

危機を評価する際に難しいのは、脅威とその規模をどう見極めるかだ。迫り来る脅威の範囲と規模がわからなければ、それに見合った対策の取りようがない。

 

今回のパンデミックを量的に捉えることが難しいのは、その危険性を見るときに2つのまったく異なる尺度が存在するからだ。

 

1つめの尺度は、健康上の脅威である。この面では、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)、豚インフルエンザウイルス(H1N1)、エボラ出血熱、1918年のスペインかぜなど過去の世界的な流行と、新型コロナウイルスを比較できる。

 

簡単に言えば、健康の観点では、1918年のスペインかぜが全世界で5000万人の命を奪って以降、新型コロナウイルスは最も広範に致命的な健康被害をもたらした緊急事態である。原稿執筆時点で200万人以上の患者が命を奪われている。読者が本書を読んでいるころには、死亡者数ははるかに増えて、何倍にもなっている可能性がある[図1]。

 

 

さて、第1の尺度が健康だったのに対して、第2の尺度は、経済的な脅威である。これに関しても過去に学ぶことができる。30歳以上の読者なら、2008~2009年の世界金融危機(リーマン・ショック)が残した爪痕を今も生々しく覚えているのではないか。誰がどう見ても、多くの人々がかつて経験したことのないどん底の経済不況だった。だが、新型コロナウイルスに比べれば、あのときの危機など、可愛いものだ。

 

世界経済フォーラムの推定では、2020年第1四半期に世界各地で都市封鎖が相次いだ「グレート・ロックダウン」中に世界のGDPが3%の落ち込みを見せた。2008‐2009年の世界金融危機の際の実に30倍である。欧州連合、イギリス、アメリカを含むG20の国に限ってみると、落ち込みは3・4%とさらに大きくなる[図2]。

 

これが、その後に続く第2四半期に比べれば、まだ楽観的な数字だったと、誰が想像しただろうか。

 

中国経済はどうにか持ちこたえたが、ほとんどのエコノミストは、これから中国にとって真の試練はもっと先に待ち受けているとの見方で一致している。中国は欧米諸国の消費需要と切っても切れない関係にあり、完全に正常化するには何年もかかるという見立てだった[図3]。

 

 

 

 

 

 

 

 

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小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

ダグ・スティーブンス

プレジデント社

アフターコロナに生き残る店舗経営とは? 「アフターコロナ時代はますますアマゾンやアリババなどのメガ小売の独壇場となっていくだろう」 「その中で小売業者が生き残る方法は、消費者からの『10の問いかけ』に基づく『10の…

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