「何とか退去させられないか」近所からのクレームに、家主も困り果てていた。(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の「家賃滞納」問題。強制執行による立退き当日、賃借人は何を語ったのか。 ※本記事はOAG司法書士法人代表・太田垣章子氏の書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より一部を抜粋・編集したものです。

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    「鮎川さんが警察にいるらしい」…まさかの事態が発生

    鮎川さんはこちらからの書面を受け取っても、何も言ってきませんでした。私が会いに行っても、不在なのか居留守を使われているのか、一向にコンタクトが取れません。置手紙をしても、事務所に連絡もありませんでした。

     

    この間にも敷地内の自転車は、日に日に増えていっていました。

     

    訴訟の日まであと1週間ほどに迫った頃、家主から「鮎川さんが警察にいるらしい」との連絡が入りました。どうやらスーパーで総菜を万引きしたところを、店員に見つかってしまったようです。

     

    警察から家主に連絡があったのは、家主に「身元引受人になってくれないか」という依頼。家主は訴訟手続きにまでこじれている最中なので「店子であることは間違いないけれど、関わりたくない」と断りました。鮎川さんには、身元引受人になってくれる親族はいなかったということでしょうか。

     

    結局、万引きした商品の代金が少額だったこともあって、鮎川さんは自転車館となった部屋に、何事もなかったかのようにすぐ戻ってきました。

     

    数日後の裁判の日、鮎川さんは自分の言い分を述べる答弁書も出さず、裁判所にも出廷せずで、明け渡しの判決は言い渡されました。このまま明け渡してもらえなければ、強制執行せざるを得ません。何とか任意に明け渡してもらえるよう鮎川さんのところに通いましたが、結局会うことはできませんでした。

     

    そして家主は強制執行することを、選択しました。

     

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    老後に住める家がない!

    老後に住める家がない!

    太田垣 章子

    ポプラ社

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