(※画像はイメージです/PIXTA)

女性の活躍が推進されている時代でありながら、多くの女性が出産や育児をきっかけに働くことを諦めている今の日本。その理由として、保育園を巡る問題が挙げられます。今回は、ベビーシッター事業、保育園事業、病院内保育園委託事業、企業主導型保育園のFC事業、人材育成・派遣・紹介事業などを展開する株式会社マザーグース代表取締役の柴崎方恵氏が、子育てに取り組みやすい仕事環境について解説していきます。

「時間がない」子育て中の社員の悩みを解決する働き方

子育てをしながら働いていると、子どもがいなかった頃に比べて、やらなければならないことが格段に増え、時間に追われがちです。お母さんたちは無駄な時間を削り、スキマ時間を活用して、なんとか時間を確保しようとします。

 

子育て世代をターゲットにしたテレビ番組や雑誌には時短術が頻繁に特集されることからも分かるように、いかに時間を生み出すかは子育て中の社員の頭を悩ませる問題です。時間節約の対象として、通勤時間も例外ではありません。往復で毎日数十分、場合によっては数時間かかるのであれば、なんとかして少しでも削りたいと考えるのも当然でしょう。

 

この解決になるのがテレワークです。

 

新型コロナウイルスの流行によって、テレワークを活用する企業も一時的に増えました。とはいえ、急ごしらえのテレワークへの移行では不便を感じることも多く、世の中の状況が落ちつくと、あっという間にまた元どおりになったという会社も少なくありません。

 

その一方で、コロナ禍に先駆けてテレワークを戦略的に導入し、成功している会社もあります。

子育て社員の救世主「在宅勤務制度」

味の素株式会社は2017年から「どこでもオフィス」という呼び名でテレワークを導入しました。「どこでも」という名前のとおり、仕事はどこでやってもよいという柔軟な働き方です。

 

それ以前にも在宅勤務制度はあったものの、ルールが厳しかったために、なかなか利用が進まなかったのだそうです。

 

どんなルールだったかというと、まずは1週間前までに在宅でどのような業務を行うかを申請し、上司の承認を受けなければなりませんでした。そして、在宅勤務当日は、電話やメールで業務の開始と終了を連絡します。事後には、どんな業務を行ったのか、内容を報告することも義務づけられていました。さらに、業務を行う場所も限定されていたうえ、回数も月に4回までと定められていました。

 

確かに、これでは必要以上に手間がかかるわりに、自由度は低く、使い勝手のよい制度とはいえないでしょう。

 

この経験を活かして導入された在宅勤務制度「どこでもオフィス」では、ルールを大幅に改めました。

 

まず、週1回の出社以外は利用制限がありません。申請は前日までとし、災害時などの緊急の場合は当日の申請も可としました。事後報告の必要もなく、業務内容や場所も問いません。

 

この制度が育児をしながら働くうえで便利なのは、業務時間を分割することもできるという点です。同社はコアタイムのないスーパーフレックス制を導入しているため、例えば、朝と夕方の時間帯は子どもと一緒に過ごし、早朝や午後、夜間に勤務するなどといった働き方も可能になるからです。

 

並行して、社員の自宅の近くなどで勤務できるサテライトオフィスなども拡充していきました。サテライトオフィスは社外に140拠点、社内に11拠点で、社宅にも2拠点(2018年時点)あります。

 

サテライトオフィスはもちろん、「どこでも」の名のとおり、自宅や、出張先のホテル、カフェなどでも勤務ができます。

 

その結果、「どこでもオフィス」の総実施者数はコロナ禍以前の2018年の数字で、全従業員の8割を超えました。このことは、社会情勢の強制力によって仕方なく利用したわけではなく、制度としてきちんと機能した結果であることの証明であるといえるでしょう。

 

このような高い利用率を実現したのは、ただ制度を整えただけでなく、デバイスにまで気を配ってそろえたということもあります。

工場でも「どこでもオフィス」の導入進む

味の素は「どこでもオフィス」の導入にあたって、持ち運びが楽にできる軽量のノートパソコンを全社員に配付しました。Web会議にもどこからでも参加できるように、カメラを内蔵しており、バッテリーの駆動時間も長いタイプです。このように、制度と環境が整い、「どこでも」仕事ができるようになったとき、残された問題はセキュリティーです。

 

同社ではパソコンの稼働時間や、メール通信ログ、インターネット・アクセスログを取得して管理しています。また、プライバシーフィルターも配付することで、社外で仕事をしているときにパソコンの画面をのぞき見されて思わぬところから情報が漏れるのも防いでいます。

 

テレワークというと、ホワイトカラーの業務のイメージが強くありますが、製造ラインを動かす工場でも「どこでもオフィス」が進められています。生産計画の立案や報告書の作成などは工場の中でなくてもできる業務だと考えているからです。また、安定して稼働している状態であればIoTなどの活用で、遠隔監視もできるといいます。

 

最初から無理だと決めつけるのではなく、どうしたらできるかという方向で考えていく同社のやり方には学ぶべきことが多いでしょう。

 

 

 

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柴崎 方恵

幻冬舎メディアコンサルティング

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